リーティアの隙あらば音楽語り

サブカル系音楽を中心に自分が気に入ったものを布教するだけのブログです

在宅で退屈なあなたへ、今こそ違うジャンルを開拓しませんか?

今月3回しか更新しなかった無能が通りますよ、と。

 

いやほんとすいません...あんまりいい感じのネタがなかったもので...←探せよ!

皆さんコロナとかいうやつのせいで楽しみにしてたイベントが潰れただのなんだので退屈している方いっぱいいらっしゃる頃なんだろうと(クソダジャレ)思うんですけど、家にいるから娯楽がない?そんなことはないんじゃないかと思いますね。先日、といってももう2週間近く前ですけど興味深いツイートを見かけまして、

......これ、音楽にも同じこと言えるんじゃない?

よく言うじゃないですか、「最近の若者は音楽聴かない」だの何だの。まあ僕は実際全くもってそうは思ってないですけど。普通に街に出れば若い人たちは音楽聴いてますよ?ただまあ、間違いなく言えることがあるとすれば、「聴く音楽がマンネリ化してる」っていうのは間違いなくそうなような気がしますね。最近のヒットチャート見ればやれKing Gnuだやれ髭男だって。もちろん彼らの音楽性がずば抜けていて素晴らしいのは言うまでもないんですけど、それはちゃんと「能動的に音楽を聴く」という行為を個々がやったうえでの結果なのか?と言われると首を傾げてしまうんです。何となく流行ってるから聴いてる、自分では開拓しない、そんなスタンスが現状を見てると見え隠れしてるなって感じることがあるんですよね。

そんな今だからこそ問い直したい。自分から音楽に会いに行きませんか?とね。

いや、元々このブログの理念はそこにあるんですが。幸い今の世の中はサブスクのおかげで家にいても何千万という数の音楽が聴き放題。チャンスだと思いませんか?俺は思うよ?というわけで、新しい音楽を開拓するメリットを少し話そうかな。。。

 

★好きは多い方が楽しい。

「自分は好きなアーティストがいるからそれしか聴かない」って人へ。普通にそれもったいないよ?普段聴かない音楽を聴いてみることによる新しい発見とか、今まで好きなものとの共通点を探ってみるとか、新しい音楽と触れ合うことの楽しみ方っていっぱいあります。趣味だってやっぱりたくさんある方が楽しいじゃないですか。それと同じことです。やっぱり音楽も、知ってれば知ってるほど、聴くにしてもやるにしても楽しいんですよ。

 

★今ある「好き」にもっと強い根拠を持たせられる。

個人的な考えですけど、より「好き」を深めるためには比較が必要不可欠だと思っていて。いくら自分が今好きなもの「だけ」聴いててもそこに説得力は生まれてこないんですよ。最初に共通点を探ってみるって言いましたけど、ここでは相違点ですね。この比較をすることで、自分が今好きなものが、具体的にどういった点で好きなのかとか、そういうことが自分の中で明確にすることができるんじゃないかと思うんですね。人に布教をする上でも、魅力を具体的に説明できた方がその人がはまってくれる可能性も上がるでしょうからね。

 

 

以上、新しい音楽を開拓するメリットをかる~くお話させていただきました。

というわけで、ここからはお待ちかね、スーパー布教タイムで~~~す。(待ってない)

 

ここ最近、僕がどんな音楽を掘っていたのか?というと、主に同人系の音楽を掘っておりました。前にお話したKawaii Future BassとかVTuberとかとはまた違う系統のやつです。それがめちゃくちゃよくて。先日のM3をきっかけに知ったアーティストとかもいて、ぜひ布教したいと思ったのでこの場を借りてやります、、、

 

 

Endorfin.

最初に紹介したいのがこちらのEndorfin.(エンドルフィン)です。ボーカルの藍月なくるさんとコンポーザーのsky_deltaさんの2人で構成されてるユニットで、CHUNITHMなどの音ゲーへの楽曲提供でも知られてます。sky_deltaさんは本来はゴリゴリのエレクトロサウンドが定評のトラックメイカーですが、こちらでは爽快なポップスを多く作っていて、なくるさんの透き通った歌声とマッチしていて聴いていてすごく心地がいいです。最初に貼り付けた曲は1stアルバムのリード曲でアルバム名にもなっている「Horizon Note」。歌詞、アレンジどこを取っても非常に作りこまれていてとても完成度が高いです。(小学生でもそれくらいは言える?)

藍月なくるさんはソロでも精力的に活動されている他、sky_deltaさんはWake Up, Girls!のキャラソンときめきアイドルProjectへの楽曲提供などアニソン方面の活動もされているのでそちらもぜひチェックを!

Jewelry days

Jewelry days

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ドラマチックを君と

ドラマチックを君と

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Limonene(リモネン)

次に紹介するこちらのユニットはボーカルの月島春果さんとコンポーザーの沙野カモメ(kamome sano)さんからなります。サノカモメさんは渋谷系チックな作風を得意としており、このユニットでもそれが存分に生かされています。今回紹介するのがこちらの「ついに二人きり」という曲なんですけど、半音を生かしたエモなコード進行だったり、弾むようなリズミカルなピアノ、全編通して暴れ回るウォーキングベースだったり、どこを取っても美味しい曲です。人気の同人音楽となるとどうしてもエレクトロ系統が多い中でこういった路線のアーティストはすごく面白いなって個人的には思います。

サノカモメさんは個人の活動では音楽レーベルMEGAREXへの楽曲提供などもしていて、エレクトロと渋谷系を掛け合わせたような他のクリエイターと一線を画したさくふうが魅力的です。

lovesick (feat. ぷにぷに電機)

lovesick (feat. ぷにぷに電機)

  • kamome sano
  • ダンス
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

Feryquitous

 FeryquitousさんはリズムゲームDeemoへの楽曲提供などで知られているコンポーザーで、その作風はクラシカル、ドラムンベース民族音楽風など非常にマルチな才能を発揮しています。紹介した曲はボーカリストsennzaiさんのソロアルバムに書き下ろした「緋の青」という曲です。この曲1つ取っても雅楽であったりクラシック、ロックなど様々な角度からのアプローチがなされていて、その実力を窺い知ることができるんじゃないかと思います。sennzaiさんのハスキーながら芯のある歌声と高い表現力も曲の世界観をさらに引き立てています。

その他にもEndorfin.のボーカリストである藍月なくるさんをフィーチャリングした楽曲だったり、またEndorfin.と合作した曲などもあります。それが「sincuvate」という曲なんですが、Endorfin.のみの楽曲ではあまりない強いキックの音やクラシカルな雰囲気が感じられるのでおすすめです。

 

M2U

M2UさんはさっきのFeryquitousさん同様Deemoなどへの楽曲提供で知られる韓国出身のコンポーザーです。実は日本の同人音楽業界では韓国勢トラックメイカーの勢いがすごいんですよ。Kawaii Future Bassを牽引するNorさんやAireさん、Aiobahnさん、またFuture Coreで知られるZekkさんなど、相当数います。最初に紹介したい曲がこちらの「Myosotis」なんですが、とにかく凄まじい展開をしていく曲です。音ゲー曲ならではって感じですね。オペラのアリアのような美しいソプラノから始まり、ピアノとウィンドで徐々に盛り上げていってから間奏で怒涛のDubStepが入ってきます。普通の曲じゃこんなのまずないでしょう。ゲームミュージック好きにとってはこれ以上滾るものはないと言っても過言ではない傑作です。

続いて紹介したいのがピアノとアコースティックギターのみで奏でられるバラード「夜明けの歌」。ボーカルのダズビーさんも韓国の方です。普通に日本語うまいですが。

最小の音で奏でられるからこそダイレクトに伝わってくる歌詞の重み。「君は負けなかった 疲れただけ」という一節は何かに悩む人、何かと闘っている人の心の荷をそっと降ろしてくれます。ぜひ聴いてほしいな。ちなみにこちらもDeemoの楽曲です。

 

 

......壮大なタイトル詐欺では?

新ジャンル開拓のすすめみたいにやっておきながら結局趣味の押し付けになってすいません!!!ただまあ、同人音楽なんていうジャンルは絶対自分から会いに行かないと出会うことはないジャンルだろうし、そういった点では意味があったのかな?この界隈とかVTuberとかも2020年が始まったころには全然僕にとっては未開拓の分野でした。それがたった3ヶ月でイベントに参加してアルバムを買うくらいには片足突っ込んじゃってますからね。やっぱりそれだけ普段聞かないものを聴いてみるっていうのは面白いんですよ。

イベントの中止や延期をただ嘆いているだけじゃ何も生まれてこないです。当然ですが。家に籠らざるを得なくなった今だからこそ、サブスクで新しい音楽を開拓することを実践してみましょう!というのが今回の記事の趣旨でした。建前は。微々たるものとはいえライブ中止で苦境に立たされているアーティスト側の収益にもなりますし、本当にいいことずくめです。塵も積もればやまとなでしここれを読んだそこのあなた、明日から、いや今からいろいろ探ってみましょう、、絶対いい出会いがあります、それは保証しますので!もし良かったら今回紹介した界隈も探ってみてほしいな(チラッ)

 

 

 

いかがでしたでしょうか?(またか)

新しい音楽を掘るのは面白いということが分かりましたね!それでは今回の記事はここまでです。次回をお楽しみに!(クソブログ構文)

にじさんじ「SMASH the PAINT!!」感想 ~ヒットメーカーが提示する、新しいヒットの形~

あれやこれやといろいろあって2週間もブログ更新が遅れてしまいました...。これからちゃんとやっていきますのでお許しを()()()

 

さてさて、今週はずっと楽しみにしていたアルバムが発売になったので、その感想を書いていきましょうかね...!

にじさんじSMASH the PAINT!!」

の前に、これを手に入れるまでの紆余曲折を話しましょうか...

 

3/18だ!キタキタキタキタ!!!!!

......サブスクにない!!!???

いやいやいやいや、このご時世サブスクないとかおかしいでしょ。しょうがないからiTunesで買おうかな...

......配信もない!!!???

ちょっと待て、今の時代にCDしかないって何だ??お前らはジャニーズなのか...?

しょうがない、本当にいいアルバムだし、現物買ってもいいよな...

......TSUTAYA、取り扱ってない!!!???

しょうがない、アニメイトまで行くか...(車を飛ばす)

...ふう、やっと手に入れた......さて、早速聴きながら帰ろうかな......

......あれ、CD入れる場所どこ?ここかな......(違う場所)

.......バキッ

 

ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

 

そうして1曲目の3倍!sunshine!カーニバル!のデータがお陀仏しました......泣いた。いやサブスクやれよ......ネット音楽がネットで聴けないのおかしいだろうが...いい曲作ってるクリエイターが一番報われん......(全て八つ当たり)

 

そんなこんなで悲嘆に暮れながらブログを書き綴ります...。

letia-musiclover.hatenablog.com

VTuberの音楽が今アツい!という話を1月にブログで書いたんですけど、その中でもこのアルバムはVTuberファンに限らず、音楽好きな人は皆ぜひともチェックすべきアルバムだと思います。主な参加クリエイターには同人音楽を中心に活動するNorさんやYUC'eさん、ボーカロイド出身のゆよゆっぺさんやHoneyWorks、アニソンで活躍するMONACA石濱翔さんややしきんさん、TAKU INOUEさんなどバラエティに富んだ作曲陣が新曲を書きおろしています。そしてそれらをまとめ上げる総合プロデューサーは「Tell Your World」をはじめ、ボカロ、アニソンにおいて10年以降のカルチャーの土台を作り上げたkz(livetune)氏にじさんじのアンセムであるところの「Virtual to LIVE」の作者でもあります。ボカロ初の商業作品「Re:Package」を制作し、ClariSTokyo 7th シスターズのプロデュースなどサブカル音楽の発展に大きく寄与してきたkzさんが、なぜ今VTuberに目を付けたのか。

 

realsound.jp

 僕の前の記事でも言ったのですが、ここでkzさんも言われている通り、「バーチャルだからこそ現実ではやりにくい表現ができる」というのは大きな強みだと思われますね。音楽という点で言えばそれと似たような雰囲気がボーカロイドにも存在していたと思います。自分では歌いにくいような内に秘めたものをボーカロイドという第三者に代弁してもらうような。VTuberの場合もそうで、自分で言葉にすることが難しい気持ちをアバターというクッションを通して表現することができるようになる。

またkzさんは記事内において「イメージソング」というカルチャーについても言及されています。

イメージソングは、その人たちが活動してきた中での時間の切り取りや配信で言った思想のような細かいディテールをさらに掘り下げていくもので、本来シンガーソングライターがやるようなことを、本人とは違う他者がやるという構造がすごく独特だと思います。 

この点においてはkzさんのボカロ作品は自分の内なる感情ではなく「初音ミク」というキャラクターのイメージソングという文脈で制作していたという印象が強く、彼が最初にプロデュースしたボーカリストであるClariSも、最初は「正体不明の現役女子中学生」というもはや僕らからすれば設定上の存在でしかなかった。彼女達の最初のオリジナルソングである「DROP」という曲は、まさにkzさんのClariSのイメージソングでした。そういう点では「Virtual to LIVE」はkzさんがキャリアの中でずっとやってきたことの延長線であり、だからこそにじさんじは彼を必要とした、とも考えられますね。

 

 

そして何よりのVTuberの音楽の最大の強みは「ジャンルに囚われない」という点に尽きると思います。記事内では「ボーカロイドという音楽タグに似ている」と言及されている部分です。Future Bassのような曲があれば、ラウドロックもあり、HIPHOPR&Bもあり、何でもありという点はクリエイターの活動の場としてもうってつけのフィールドでしょう。今回のアルバムもそうした音楽的な強みを最大限生かすべく、kzさんが多方面からクリエイターを集めています。1人の総合音楽プロデューサーが存在して、その世界観をもとに他のクリエイター達が曲を作っていく、というアルバムの構成はまさしく前回紹介した鹿乃「yuanfen」と非常に似ているわけです。このプロデュース形式はアルバムの世界観と楽曲のバラエティの両立という部分ですごく効果的だなって思います。

全曲レビューしようかな...と思ったんですけど、流石に12曲はちょっと多いので印象に残った何曲かを代表として紹介していこうかなと思います。

 

1+1でQ.E.D.!! / 御伽原江良 & 童田明治

作詞・作曲・編曲:Nor

NorさんはKizuna AIのプロデュースや前回の記事でも鹿乃さんの「光れ」の編曲者として紹介させていただきました。全体的にアニソン、特にキャラソンの文脈を踏んだカワイイ系ソングですが、ドラムンベース的なアプローチだったり、Aメロであえて生ベースの音を取り入れてみたりと色々な角度からスパイスを入れてきています。特に2Aのスラップだったり間奏でギターソロなんていうのは普通のクラブミュージックじゃまずないので、そういう面白い試みをやれるサブカルソングの強みを存分に感じられる曲なんじゃないかと思います。

 

サンデーサンデー・フルーツフール / える & シスター・クレア 作詞:八城雄太 作曲・編曲:石濱翔(MONACA)

アニソン界では言わずと知れた鬼才集団MONACAから石濱翔(かける)さんが参加されたのがこの曲です。石濱さんはMONACAの中ではエレクトロポップサウンドを得意としており、そこにkzさんが目を付けて参加に至ったという感じでしょう。モダンな音色と渋谷系のような落ち着いたメロディが共存しているところがこの曲の魅力でしょうか。そのお洒落さを増幅させているのが要所で挟まれるストリングスセクションとギターのバッキングですかね。こちらの楽曲もギターを演奏されているのはお馴染みの堀崎翔さん。普段と違うアプローチの堀崎さんの演奏もまた聴きどころです。

 

Playtime Magic / 加賀美ハヤト & 夢追翔 & 緑仙

作詞・作曲・編曲:Avec Avec

今回のアルバムの大穴。バケモンですこれ。

昔からの正統派な日本風R&Bと言われればそうかもしれないですけど、Kawaii Future Bass以降のネット音楽的なサウンドも積極的に取り入れてきてるんですよね。Avec Avec、天才か?IIm7→III7→VI△7とかいうコードイカしすぎでしょ。いろいろVTuberの曲漁ってみましたけどこの手の曲って実は今まであまりなかったんじゃないかと思うのでこれはかなり新鮮でした。あと僕は単純に緑仙さんの歌声が好きです。緑仙さんがボーカルを担当した曲で「Last Resort」という曲があるんですけど、マジで声綺麗なのでそちらもチェックしてみてください。

 

 

Aimless Story / 静凛

作詞・作曲・編曲:kz(livetune)

 

総合プロデューサーのkzさんが作った曲は静凛ちゃんのこの曲です。いや、最初解禁されたときの衝撃ときたら。kzさんのダウナーで奥行きを感じるようなサウンドだともしかしたらやなぎなぎ-emptyまで遡るかもしれないです。まるで大気圏を突き抜けて宇宙を彷徨うようなPADとピアノの音色から、包み込むようで力強さを併せ持つ凛ちゃんのボーカル。タイトルの「Aimless Story(あてのない物語)」というのは、これまで、そしてこれからもずっと、にじさんじがライバーとリスナーが一体となって作られるものであり続けるようにというkzさんの願いであるようにも思えます。根っからのkzオタクとしても自信をもってお勧めできる曲なのでぜひに...!

 

イントロで似た雰囲気を感じたこの曲、数少ない北欧系エレクトロニカなのでおすすめです...めちゃくちゃいいぞ......

 

アンチグラビティ・ガール / 月ノ美兎

作詞:MCTC 作曲・編曲:TAKU INOUE

満を持してアルバムの最後を飾るのは委員長こと月ノ美兎ちゃんのオリジナル曲。もうイノタクさんには頭が上がらん...何でこんなアップテンポのはっちゃけた曲で泣いてるの俺は...?この曲がアルバムの最後でほんとによかったなって思います。まず最初のヤバい点が一貫して生ドラムにこだわってるところです。クラブミュージックで生ドラム使っちゃいけないなんて誰が言ったと言わんばかりに生ドラムのフレーズをぶっこんでくるんですよね。好きすぎる。固定概念を完全に壊してくれます。歌詞の内容は「今まで辛いこともいろいろあったけどそれもこの先も笑っていこう」というVtLとはまた違う、にじさんじという存在を象徴する曲だなって感じました。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?(中身のないブログあるある)

にじさんじのアルバム、まさしく「未来のJ-POP」があるべき姿のひとつなんじゃないかな、と。ボカロ、アニソンにおいて最前線で活動してきたkzさんをはじめ様々なクリエイターの皆さんだからこそ描けるものだと思います。言うなれば、そのための実験場です。そしてその実験場は、リスナーを試すものでもあります。あれだけの様々なジャンルが入り乱れるアルバムは他になかなかないでしょう。どれだけ幅広くリスナーが興味を示してくれるか。作る側の我儘に聴く側はどこまでついてきてくれるのか。そうしたこともこれからの音楽を考えていくための物差しになるでしょう。「発信者と受信者が一体となって作るコンテンツ」には、ある点では発信者本意な側面もある、と。

そういう難しい話はさておき、このアルバムが「ガチの名盤」であることはもう紛れもない事実なので。ほんまにサブスクに出してくれ(切実) 音源入手方法がCDしかないと本当に人に勧めにくいんですよねぇ...もっとたくさんの人にVの音楽の魅力を知ってほしいんだけどなぁ。。。というわけでなんかほかに書くこともなくなってきたのでここまでにしましょうか。みんなでにじさんじのアルバムをサブスクに出すよう圧をかけていきましょう() ではでは次回もよろしくお願いします♪

鹿乃×田中秀和「yuanfen」全曲レビュー ~アニソンと同人音楽の交点~

今世紀最強のアルバム、降臨―。

こんにちは!3月になりましたね。3月最初の水曜日、またたくさんの新譜が解禁されて楽曲派の皆さんはお忙しいところかもしれませんが...。そんなたくさんの新譜の中でも一際異彩を放つとてつもないアルバムがありました。

 

鹿乃「yuanfen」

 

...... 何なんだこのアルバムは。まさに今自分が聴きたいと思う音楽のど真ん中を突いてくる大傑作でした収録曲全て新曲、しかも全ての曲の作曲及びアルバムのプロデューサーを手掛けているのがあの田中秀和さん。さらにその秀和氏の楽曲を彩る様々なアレンジャー。まさに大事件でした。

そしてその中でも特にすごいと思った点が、同人音楽、世間的に言うところのKawaii Future Bass出身のクリエイターであるAireさん、およびNorさんが今回のアルバムには参加されていること。アニソンというフィールドで10年にわたってキャリアを積んでいる田中秀和氏とまさにこれから伸びるであろうコンテンツのクリエイターの邂逅は、衝撃的であると同時にある意味では必然だったようにも感じるわけです。秀和氏の圧倒的なプロデュース力とこれからの新時代を幕開けを感じさせるサウンド、その2つを同時に感じさせるアルバムが、これまたニコニコ動画を源流とするアーティストから生まれた。これを事件と呼ばず何と呼ぶのか。この先のサブカル音楽について考察していく上でもまさに「激ヤバ鬼マスト」なアルバムです。

そんなこの作品について、Twitterじゃ語りつくせない...!と思ったわけで、1記事まるまる使って感想を書くことにしました。お付き合いくださいませ。

 

 

※全作詞:鹿乃 作曲:田中秀和

 

 

M1「午前0時の無力な神様」

編曲:Aire

 

アルバム発売に先んじてYouTubeで解禁されていたのですが、その時点でとんでもない衝撃を受けましたね。秀和節をガンガンに効かせたメロディの裏でKawaii Future Bassが鳴ってるんですよ。やばくないですか?しかしただのエレクトロサウンドではなく要所でギターやストリングスパートを引き立たせていて、相当にレベルの高い編曲になっているなって思います。メロディ面において特に秀逸だなと感じたのは2Bの「ああ 何で自分は無力なんでしょう~」の部分ですね。G#mのセカンダリドミナントを見せかけたようでそこに飛ばずにEミクソリディアンのようなフレーズを提示し、次にF#mのドミナントと見せかけてEメジャーに戻ったと思ったらその同主短調のEマイナーでリフレインさせる、と目まぐるしく調性が変わっていくんですね。この部分のコード進行はおそらくA#m7-5→D#7→D△7→C#7→A△7→Am△7となっていますね。(合ってる?) 1つかなり気になる点があるんですけど、コードをつけたのは秀和氏なのかAireさんなのかすごく興味深いんですよね。なかなか一聴しただけでは判別しづらいものです。最後のG#aug/DはAireさんの遊び心のような気もしますが...... とにかく、まさにこの曲は10年代のサブカル音楽の総括であると同時に20年代の音楽のビジョンを示すものとして素晴らしいものじゃないかと。元々「歌い手」は現実の存在を非現実のキャラクターとして売り出す手法を取ってきた界隈なので、そうした売り方が今のVTuberなどにも繋がっているんですよね。そうしたキャラ作りならではの非現実性を帯びた歌詞というのも大きな魅力じゃないかと思います。

 

M2「光れ」

編曲:Nor

光れ

光れ

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NorさんといえばKizuna AIの初オリジナル曲「Hello, Morning」の制作など、まさにVTuber音楽のパイオニアと言ってもいい存在ですが、今回ここにアプローチした秀和さんの目の付け所の素晴らしさを本当に称賛したいなって思います。すごい。午前0時の無力な神様と比較するとメロディもアレンジも割と直球なんですけど、そこに色を付けているのは何といってもNorさんのサウンドの強さでしょう。最近のネットミュージックを通っていれば一発でわかるような個性を持つ彼の編曲なんですけど、これが想像以上に秀和氏のメロディとの親和性を持ってるんですよね。聴いてみないとわかんないもんですね。鹿乃さんの歌声の属性的な問題なのかもしれないですけど。もしかしたら秀和氏は「鹿乃さんなら合う」という絶対的な確信があってAireさんやNorさんをアレンジャーに迎えたのかもしれませんね。まさに奇跡の融合によって生まれた1曲だなって思います。

 

M3「yours」

編曲:田中秀和

yours

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3曲目にして最初の秀和氏自編曲楽曲ですが、さっきまでのKawaii Future Bassから一転、ダウナーな雰囲気を纏ったラテン調(?)の曲です。攻めまくりかよ......

この曲なんですけど、もう全てがヤバいとしか言いようがないです。演奏陣にはギターが堀崎翔さん、ベースドラムがそれぞれDEZOLVE小栢伸五さん山本真央樹さん。編曲のレベルもさることながら、それぞれの演奏者のバックグラウンドが存分に発揮されているのが本当に凄まじいです。特にすごいのが2番後の間奏ですね。いや1番後の間奏もピアノアドリブすごいけど。ここがなんとCハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウスケールで8分の15拍子なんですよ。完全にプログレってかこんなことしちゃっていいの?????なんかもう、すごい時代になったなって思いますね。ギターのバッキングがいい味出してるし、ドラムは複雑なゴーストノートの連続帯だし、変態間奏に入る前の変態ベースソロとか、全身大トロか?って感じです。←は?前2曲との落差に酔いしれてくれ...。

 

M4「KILIG」

編曲:ハヤシベトモノリ(Plus-Tech Squeeze Box)

KILIG

KILIG

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 3曲目からはまた一転して陽気なナンバーですね。編曲のハヤシベトモノリさんのことは恥ずかしながら名前を存じ上げなかったのですが、ネオ渋谷系方面で活躍するかなりの実力者の方のようですね。こちらの編曲はKawaii Future Bass的なアプローチを基調としながらも、サビではロックンロールになったり、様々な顔を持つアレンジで展開がすごいです。個人的な聴いた第一印象だとYunomiとsasaaakure.UKを足して2で割ったような感じでした。メロディも非常によく、サブドミナントマイナーのエモーショナルな響きを十分に生かしてます。一般的に田中秀和といえばコードワークのすごさだと思われてしまいがちな気がするんですけど、こうやって他の人が編曲したものとかを聴くとメロディメイカーとしてもすごいんだということを実感する機会になりますね。ネオ渋谷系とFuture Bassの折衷で、レトロフューチャーを味わえる楽曲じゃないかと思います。

 

M5聴いて」

編曲:田中秀和

聴いて

聴いて

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 ここから何曲かはバラード調の曲が何曲か続くんですけど、その最初の曲がこちら。

まず今まで全然言及しなかったですけど、純粋に歌詞がすごいと思った。

「私はあなたが描くように 優しくも面白くもなくて 悪魔にも天使にもなれない あなたが嘆くあなた自身だ」 これは違う誰かではなく、自分自身から自分自身へのメッセージなんですね。すごく美しい表現だなって思いました。そんな感情に秀和氏が示したのはすごく真っ直ぐなメロディ。鹿乃さんの透き通る高音が、まさに心の叫びのように、聴いている自分の心を共鳴させました。そしてその叫びにより説得性を与えているのが、揺蕩うようなメロディとは真逆の真央樹さんの激情的なドラムなんです。普通のドラムパターンだったらこの曲はここまで輝かなかったのかもしれない。秀和さん、真央樹さん、どちらのアイデアかはわからないけど、あのドラムはまさにこの曲から欠けてはならないピースだと思います。歌詞を一通り噛み締めたら、ぜひドラムの音色に耳を傾けてみてください。これを感じるかどうかで、この曲の印象は全然変わると思います。

 

M6「漫ろ雨」

編曲:曽我淳一

漫ろ雨

漫ろ雨

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 この曲は90年代のJ-POPのようなノスタルジックな旋律の曲で、編曲の曽我淳一さんはサザンオールスターズTHE BACK HORNなどのプロデュースに関わっている方です。さっきまでの曲に比べると幾分各々のフレーズの主張は少ないんですが、むしろそれがこの曲の魅力じゃないかと思いましたね。このタイミングでシンプルisベストな曲を入れてくる秀和さんの采配ほんとずるいですよ。。。そんな曲だからこそ堀崎さんのあのえぐいギターソロもより強いインパクトを持って聴こえてきますし、そして落ちサビのコードは見事としか言いようがないです......分数aug、ハーフディミニッシュ、IV#dim7の部分ですね。多分あのコード進行を考えたのは秀和さんのような気がするんですけど、よくこのメロディにこのコードつけるよなぁ、と...そういう人か...

ちなみに「漫ろ雨」という言葉の意味は「いつまでも止まない小降りの雨」のこと。これを知ると雨模様での淡い恋心がすごく見事に表現されたアレンジだなって改めて思いますね。

 

M7「おかえり」

編曲:Oliver Good

おかえり

おかえり

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 1番鹿乃さんらしいなって思ったのがこの曲なんですけど、こういう曲聴くと泣きそうになるんだよな...。僕が聴いて思ったことなんですけど、これは多分ペットが死ぬ歌なんですよね。ほんとに切ない...。最後の歌詞が「少しだけ眠たくなってきた」「もう少しだけこのままもっと起きていたい」「君におかえりを伝えてないんだ さよならまたね」ってこんなん号泣不可避です...。これの編曲を担当したのがMONACAの新鋭オリバー・グッドさん。こんな優し気な曲でありえないほどにえげつないコード進行使ってるのにキャッチーにまとめ上げてきたオリバーさんのアレンジ力は恐ろしさすら感じましたね...。メロディは本当にBメロで短3度転調を挟む以外はほんとに何の変哲もないんですよ。そんなメロディーにこのコード進行がつくんですよ。いや考えられない...。それとあとはバッキングが本当に素晴らしいですね。この曲も堀崎さんがギターを演奏されているんですけど、すごく丁寧に演奏されていてすごく心地いいです。歌詞の意味色々知っちゃったらあれなんですけど、暗さを感じさせないようなオリバーさんの素晴らしいアレンジと共に世界観に浸ってくれたらいいのかなって思います。

 

M8「罰と罰」

編曲:佐高陵平(y0c1e)

罰と罰

罰と罰

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 単刀直入に言うと、y0c1eさんここまでやばいとは思ってなかった...。

キャッチーなエレクトロサウンドを使いながらミステリアスさを出してるって点でさっきの「おかえり」とは正反対のような曲になりますね。エレクトロなんだけど序盤のKawaii Future Bassとは全く違う属性の、トランスのような曲ですね。ベースラインに耳を傾けてもらうとわかるんですけど、意味わかんないほど気持ち悪いんですよ。なんでこれが曲として成立してるのかわかんなくなってくるレベル。しかもシンセじゃなくて生ベースの音を使ってるんですよね。それがよりサイケデリックさを出すのに一躍買ってる感じがしますね。とにかくこだわりがすごい。いやこれをy0c1eさんにアレンジさせようとした秀和氏がすごすぎる。8曲目という何とも微妙な位置にある曲ですけど、今回のアルバムの大穴なんじゃないかなと。キャッチーな曲を作るクリエイターのイメージだっただけにそのギャップに見事にやられました。ボーカルの表情も他の曲とは明らかに違って何かヴェールをまとったようなそんな印象を感じますね。本当に、いい意味でコンセプトから外れた曲だなって感じました。

 

M9「エンディングノート

編曲:sugarbeans

エンディングノート

エンディングノート

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 ついに最後の曲になりました。この曲の編曲は秀和氏の楽曲に度々ピアノで参加しているsugarbeansさんです。「エンディングノート」という題名が示すように、死にまつわる歌、死んだ恋人へ贈る歌です。それなのに弾むような明るい曲調に仕上がっていて、おかえりもそうなんですけどそれが余計に涙を誘うというか...。鹿乃さんの歌声もどこか、悲しみをこらえているような感じがするんですよね...。でもそれが本当に素晴らしいです。

アレンジに関しては、ピアニストであるだけあってピアノのアレンジがやっぱり素晴らしいです←小学生の感想か?やっぱりハーフディミニッシュやクリシェがえもさを出している点ではアニソンのDNAを継承しているんだなといった印象で、所々入るグリッサンドもとても美しいですね。

そうは言ってもこの曲に関しては作詞を褒めたいと思うところで。僕は作詞の方面に関しては何にもわかんないんですけど、言葉のひとつひとつに感性が滲み出ていて、そんなに難しい単語を使っていなくても、いや、使ってないからこそかな?ストレートに気持ちが伝わってきて、共感ではないですけど、言葉に心を動かされるなって感じました。鹿乃さんすごいな......。

 

 

 

とにかくこのアルバムは素晴らしかった!!!

っていう僕の気持ち、これで伝わりましたかね...。実は鹿乃さんは高校の頃から好きだった歌い手さんで、彼女が歌ったクライヤを辛い時何度聴いたかってくらい助けてもらっていました。そこからはファンとして追っていたわけではなかったんですけど、今回こうした素晴らしい作品を通して、再会っていう言い方は違うかな?また彼女の歌声に触れる機会を得れて素直に嬉しかったなって思います。そして一介の作曲家オタクとして、今回、いや今回に限った話ではないですけどこんなに素晴らしい音楽を世に送り出してくださった田中秀和さんをはじめアレンジャーの皆さんに本当に感謝と尊敬の念を抱いています。本当にありがとうございました。

そして、鹿乃さんや秀和さんのファンだけじゃなくて、もっとたくさんの人にこのアルバムの存在を知ってもらって、聴いてもらいたいなって思ってます。音楽的なこととか分からなくても、彼女の歌声、言葉選びの素晴らしさ、それを引き立てるプロデューサーのすごさを、この作品からは感じてもらえると、そう信じています。

 

なんか最後真面目なノリになっちゃったな...。まあ今回はご愛嬌ということで。ここまで読んでくれた皆さん、こんな6000字を超えるような大長文に付き合ってくれて本当に感謝です。また次回の記事でもお会いできるのを楽しみに待ってます!ではでは!

新譜感想まとめ ~2020年2月編~

【悲報】2020年、2ヵ月が終了。

 

この間今年の10曲とかやったばっかりじゃないの...!!!なんでこんなに時が進むのは早いんじゃ?

今月のブログは色々なことがありましたね。記事が伸びたり記事が伸びたり記事が伸びたり....... そんなこんなで肝心の新譜宣伝が今月はあんまりできてなかったんですよね。というわけで、今から今月出た新曲についてダラダラと感想を述べていこうかなって感じで。久々に何も考えない記事を書くよ。お付き合いよろしくお願いします。

 

 

ココロソマリ / 水瀬いのり

M1「ココロソマリ」 作詞:水瀬いのり 作曲:櫻澤ヒカル 編曲:白戸佑輔

M2「僕らは今」 作詞・作曲・編曲:藤永龍太郎

M3「Well Wishing Word」 作詞・作曲・編曲:柳舘周平 2/5発売


水瀬いのり『ココロソマリ』全曲試聴動画

1曲目は「ソマリと森の神様」のエンディングテーマです。編曲が僕の敬愛してやまないクリエイターの白戸佑輔さんということで非常に期待値が大でした。白戸さんは水瀬いのり楽曲だとLucky Clover、アイマイモコ、ハートノイロ、ピュアフレーム、Kitty Cat Adventureの5曲に参加されていて、いずれの楽曲でも高いアレンジセンスが存分に発揮されているわけなんですけど、今回の曲もとても美しい仕上がりです。個人的に注目したいポイントはBメロの5、6小節目のC#m7-5→D/C→Bm7→Gmの半音下降ですね。Gメジャーのメロディの中にひとつGマイナーを挟むことによってより切なさが増すようになっているのはまさに白戸さんならではのセンスだと感じました。またこの曲はサビでAメジャーに転調しますが、これはほんとに個人的な印象論なんですけどGメジャーは爽やかさの中に少しもどかしいような感情があって、それに比べるとAメジャーはすごく明るい輝きを感じるんですよね。よくある短3度ではなく長2度の転調にしたのはすごく意味のあることなんじゃないかと思いましたね。

2曲目「僕らは今」はエレガ藤永さん制作の6分半にも及ぶ2部構成のロックナンバーですね。藤永さんは「星屑のコントレイル」を筆頭にリズミカルながらも芯のあるロックチューンで彼女の楽曲における貢献は計り知れないですけど、中でもこの曲はまさに集大成と呼ぶに相応しい大作です。この曲はぜひともドラムに着目して聴いてほしいなって思いますね。6分半という長さの中で多彩なリズムパターンを駆使して飽きさせない展開を作っていると思います。サビのブレイク(通称跳びポ)もすごく気持ちよくはまっていて癖になります。

3曲目「Well Wishing Word」は前向きな気持ちでお別れを歌う軽快なナンバーなんですけど、あろうことかこれが山内"masshoi"優さんが参加した最後の楽曲となってしまいました。CDのブックレットには彼への感謝の言葉が添えられています。その他の演奏メンバーもPf岸田勇気氏、Gt奈良悠樹氏など超豪華で、アドリブの高速パッセージだったり、大サビ前のヤバいドラムフィルだったり、もう聴いてて楽しいところしかないです。コード進行もバリエーション豊富でオタク大好きなやつだし。どうかmasshoiさんの魂をこの曲で感じてください。

 

 

Smile / Eve

全作詞・作曲:Eve 編曲:Numa (M8:TAKU INOUEと共同) 2/12発売

ネット発シンガーソングライター・Eveのメジャー2枚目のアルバムになります。今回のアルバムは今までのポップ中心の音楽性を一新し、エレクトロサウンドを取り入れつつダークなナンバーを多く提示することで新しい音楽性を模索しており、なかなかに画期的な作品だと感じましたね。M2「LEO」はHIPHOPを基調とするビートにストリングスを乗せつつ、ボーカルエフェクトをゴリゴリに掛けた曲で、これをアルバムの頭に持ってくるというのは相当攻めてます。サビの歌詞で「生まれよう 応答してくれよ」と「LEO」に対して韻を踏んでいるというのもなかなかに面白いです。

全体としてダーク、とは言ったものの、このアルバムで異彩を放ちつつ軸になっているのがM8「心予報」なことは間違いないですね。この曲はなんとアレンジに「Radio Happy」「ミラーボール・ラブ」など多くの名曲を生み出してきたイノタクことTAKU INOUEが編曲に参加しています。随所に散りばめられているきらびやかなシンセサイザーは先述したアイマス楽曲ではすっかりお馴染みですけど、Eveの歌声ともこれが予想以上にはまってるんですよね。完全にイノタクさんの掌の上で踊らされるオタクです。

そしてアルバムの実質的な締めとなっているのがM11「Mellow」なんですが、これまでの「お気に召すまま」や「君に世界」のような綺麗に終わらせるものではなく、夢と現実の狭間を揺蕩うような不思議な感触を持つエレクトロニカになっていますね。ナンセンス文学やドラマツルギーのイメージからすればかなり驚かされる1枚だと思います。Eveこういう表現もできるの!?ってさせるアルバムです。ぜひに。

 

 

 

Ordinary Songs 5 / Snail's House

全作曲・編曲:Snail's House 2/23発売

Kawaii Future Bassのパイオニア、Snail's Houseの出しているEP「Ordinary Songs」シリーズ第5弾です。ちなみにこの2/23は彼の誕生日。おめでとうございます!ちなみに今年の誕生日で23歳になられました。エグすぎん?????

普通Future Bassって言えばビート、リズム中心の音楽って考えになってしまいがちなんですけど、彼の音楽はコード進行がめちゃくちゃカラフルで、メロディアスなのが大きな魅力ですね。動画を貼り付けた「Jack in the Box」はベースのメロディを最初に提示してそれを何回も変化させながら展開していくいわばクラシックの変奏曲のような形式をとっている曲なんですけど、ただただコードパターンをループさせているわけではなくてその都度細かい変化を加えながらメロディを足してるんですね。芸が細かすぎる。今の時代歌詞に頼らずにここまで多くの人を引き寄せる音楽を作る才能がある人は彼含め一握りでしょうね。M6「Hoshizora」なんかは星が降り注ぐ様子が音のエフェクトから伝わってくるようで、言葉がなくても音楽を聴くだけで情景がパッと出てくる。自分が書きたいものと世間が求めるものを絶妙なバランスで両立させている、ほんとにすごいクリエイターです。普段歌詞のある曲しか聴かない人は騙されたと思って彼の音楽を聴いてみましょう。度肝抜かれます。

 

 

星をあつめて / fhána

M1「星をあつめて」作詞:林英樹 作曲・編曲:佐藤純一

M2「Code "Genius"? (English ver.)」 原作詞:田淵智也 英訳詞:齋藤光二 作曲・編曲:佐藤純一

M3「世界を変える夢を見て」 作詞:林英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:fhána 2/26発売

 

まず、「SHIROBAKO」という「クリエイター」という存在にスポットを当てた作品の主題歌にfhánaというクリエイターとして表に立ってきたアーティストが抜擢されたっていうことが、本当に素晴らしいなって思います。YouTubeの紹介欄でも関わった全てのスタジオミュージシャン及びスタッフがクレジットされていて、裏方の人々に敬意を忘れない姿勢を心から尊敬したいですね。

ちょっと話すことが多くなりすぎそうなので表題曲だけの話になっちゃうんですけど、バンド編成に加えストリングス、ホーンを加え、とても多幸感ある楽曲だなって印象です。Aメロがカノン進行、BメロはVIm→II7→VII♭→Iという変化球を投げつつ、サビに向けてE→Gへの転調を挟んでいきます。サビが6451進行、クリシェ、45でEに戻すという展開ですね。これまた凝った展開だなと思いつつ、一番褒めちぎりたいのが2Aです。ここでいいと思ったのがヴィオラが旋律を受け持つところです。ヴィオラって普段オケでもなかなか表に出ることの少ない楽器なんですけど、ここではそれがはっきり聴こえてくる。まさに裏方にスポットを当てるという作品意志と呼応しているなといった印象です。Dメロでは最初に紹介したココロソマリに似た半音下降が登場しますが、こちらはC#m7-5→Cm→Bm7→Gmとよりモーダル感の強い進行になっていますね。非常に細かい部分までこだわり抜かれた、まさにクリエイティブを体現した曲です。劇場で聴けるのが楽しみすぎる。

もうこれは毎度のことなんですけど、カップリングもめちゃくちゃいいです。特に「世界を変える夢を見て」はまさにfhanaのこれまでを体現するようなサウンドが詰まっているので是非聴いてほしいですね。全曲インストもつけてくれていますので楽器の音も堪能してくれたらとても嬉しいです。

 

 

 

 

このブログ、朝の5時から書き始めています......俺は何をやっているんだ?

2020年もいい曲が出まくっていて、ここで紹介しきれなかったものもいっぱいあります。みんな新しいものガンガン漁っていく精神を忘れないようにしましょうね()

3月も注目の新譜はいっぱいありますけど、個人的には何と言ってもAimer「春はゆく」が楽しみで仕方ないですね。Aimerは僕にとって、ボーカリストとしてあまりに特別な存在なので。まるまる記事ひとつ使ってシングル1枚のレビューにしようかななんて考えたりもしてます。

 

 

あとこちら。「星をあつめて」についてファンの方が書かれた10000字にも及ぶレビューです。僕が全然さらいきれなかった徹底的な歌詞考察などがなされているのでぜひ読んでほしいなと思ったので、この場をお借りして紹介させていただきます。僕もこれくらい愛のある文章が書けたらいいな、なんて思ったりもしますね...。

 

 

ブログって2600字くらいが一番読みやすいみたいなことを聞いたんですけど結局今回も4000字を超えました!お疲れ様です!次はどんな記事を書こうかな、また考えておこうと思います。ではでは!

「同人音楽」、実はすごいよって話

こんにちは!

やっぱり一度記事が伸びると「伸びる記事を書きたい!」っていう欲が出てくるんですよね。それで、何かいいネタないかなーなんて思って考えてたんですけど、ちょうどいい感じで紹介したい題材があったので。ちょっと今回は面白い内容になるかも...?(自分でハードルを上げてくスタイル)

 

突然なんですけど、 M3 っていうイベントを知ってますか?

まあ、簡単に言うと、音楽のコミケみたいなものです。主に趣味で音楽活動をしている一般の人たちが参加して自作のCDを販売するっていうイベントで、東京の流通センターで春と秋の年2回やってる即売会なんですね。

 

「素人が作ってる音楽なんてどうせ大したことないんでしょ?」

 

なんて思った方。まず始めに断言すると、そんなことはないです。今回はそんな「同人音楽」、いわばアマチュアが作る音楽の魅力を自分なりに書いてみたいと思います。その中でフォロワーさんがやってる活動の宣伝なんかも出来たらいいかなって感じで。

 

 

同人音楽、どんな魅力があるの?

同人音楽の魅力。一言でいえばズバリ、

"形式にとらわれない、自由な発想の音楽"

っていうところだと思います。プロの音楽っていうのは必然的に売上っていうものがついてきちゃうので、「売れる音楽」を書かないといけない。となると、自分を前面に押し出すような挑戦的な曲っていうのはどうにも一般聴衆には受けが悪いのでなかなか書けないんですよ。これがアイドルのコンペとかだと尚更ですね。最近だと前に書いたみたいな一人のプロデューサーの手で実験的な音楽を展開するようなアイドルも登場してはいますけど、基本的にはアイドルソングってわかりやすい曲が受けちゃうんですよね。AKBみたいな。となるとどうしてもある程度「形式」にとらわれたものになっちゃう、ってことなんですね。

同人音楽はそこが決定的に違うわけです。つまりは「自分を知ってもらう」っていうことを利益以上に大切にしているんですね。自分を知ってもらう、つまり印象に残るためにはインパクトのある曲を作る必要があります。その中で、意表を突いたコード進行の曲だったり、メインストリームにはほとんど現れないような前衛的なジャンルの曲がどんどん出てくる。そこがやっぱり同人音楽「聴いてて楽しいな」って思う部分じゃないかなって個人的に思ってます。

同人音楽がこうやって自由でいられる理由はもう一つあるんですね。それが「聴く側も大の音楽好き」だってことです。それはそう。基本的にアマチュアが作った曲を金払って聴こうなんて人間はよほどの物好きか、自分も作ってるっていう人くらいしかいないですからね。そうした人たち向けに曲を作るとなると必然的に前衛化していきます。結果として、既存の枠から解き放たれた高度な音楽がどんどん出てくる、というわけなんです。

 

同人音楽から商業音楽へ!

日本でこの同人音楽が大きく注目されたのはVOCALOIDの登場がとても大きいです。元々ニコニコ動画における非営利の活動として始まったものから次第に注目を浴び、当時ボカロPとしてアマチュアで曲を書いていた人たちがどんどんプロになっていったんですね。同人である程度やりたい放題曲を作っていた人たちがプロになっていったことで、J-POPはその前後で一変しました。これについてTwitterで言われていたことがボカロネイティブ世代が大人になったことで技巧的な曲が受けるようになった」ってことなんですね。もうこれは米津玄師(ハチ)というボカロ出身のアーティストが業界を席巻してしまったことからもそうなんですけど、その後に登場したKing GnuOfficial髭男dismといった存在も10年ほど前まではまず見なかったような複雑なメロディやコード進行を組み込んできてるので、商業音楽が同人音楽に近づいた、というのは一定の根拠はあるような気がしますね。

アニソンなんかは普通のJ-POP以上にその気が強いです。アニソンクリエイターって「自分が書きたいものを書く」っていう風潮が普通のJ-POPに比べて強い気がするんですね。そこが大きな魅力なんですけど。っていうのも最初と最後の89秒でいかに印象を残すかっていうのがアニソンの重要なポイントなので、その点で僕はアニソンと同人音楽は似てるんじゃないかと思うんですよね。実際にM3に曲を出展している人もかなりアニメオタクが多くて、アニソンに影響されている作品も多くあります。さらに実力を持ったボカロPが多くアニソンに進出してきたことでそれまでアニソンを中心に活動していたクリエイターと相互に影響し合ったことで、よりアニソンと同人音楽は近しい存在になっていったんじゃないかっていうのも一理あります。supercellのryoさん、kzさん、堀江晶太(kemu)さんといった人たちは今やアニソン界ではかなり強い存在になって影響力を及ぼしてますし。

 

☆実際に同人音楽を聴いてみよう!

さて、同人音楽について一通りの考察を終えたところで、今度は実際に彼らがどんな曲を作っているのか、去年のM3で購入させていただいたサークルさんの作品を一部紹介させていただこうかなと思います。

 

Why don't you eat MONACA? / MOタク

 

最初に紹介するのはこちら。MOタクとは「MONACAのオタク」の意味で、神前暁さん田中秀和さんといった有名クリエイターが多数している音楽制作会社MONACAのオタクで結成されたサークルで、僕のフォロワーさんもたくさんここに所属してたりしてます。宣伝じゃんこれ。MONACAのオタクということで、MONACAっぽい曲を売りに販売された全13曲のアルバムです。音作り、コード進行どこを取っても商業音楽に引けを取らないクオリティの楽曲なのでクロスフェードだけでもぜひ覗いてみてくださいね!

さらに!

今年もMOタク出展します!

前作よりさらにレベルアップした楽曲が聴けちゃいます。なんと僕がヴァイオリンで参加した楽曲も1曲収録されちゃってます、ぜひ当日会場にお越しください!完全に宣伝じゃないか!!!!!!

 

星の行きつく先 / 綾倉盟

こちらも秋のM3でブースにお邪魔させていただいたサークルの作品で、「ときも」さんと「すずやみ なと」さんの2人で制作されたEPです。こちらは堀江晶太さんの曲がお好き、ということで、全体的に彼に対するリスペクトを感じる楽曲が多いです。1曲目の「連星ストーリー」なんかはまさに堀江晶太楽曲ではお馴染みのハーフディミニッシュの使い方がなされていて、堀江氏の曲をよく聴く身としてはとても好みの楽曲でした。2曲目の「Stellar Factory」は疾走感溢れるナンバーですがピアノが絶妙に甘酸っぱさを演出していて、本当にアマチュア?って思うくらいの仕上がりです。

 

I Re:s / MisoilePunch

 

3つ目に紹介するのはこちら。MisomyL(みそみぃる)さんとPonchi(ぽんち)さんによるユニット、MisoilePunch(ミソイルパンチ)です。この2人、もう既に音ゲーなどへの楽曲提供をこなしていたりと活躍されています。すごい。。。このEPに収録されている曲も全体としてシンセサイザーを活用した高bpmの曲が多く、とても勢いのあるアルバムです。個人的に気に入ったのは5曲目の「DisXloss」。男女の高音ボーカルのぶつかり合いで、アニメのOPのような熱量のある曲です。通販もやってるそうなのでよければ調べてみてくださいね!

 

☆プロも同人音楽に参加することがある!

ここまで「アマチュアの音楽」として同人音楽を紹介してきましたが、なんとプロも「同人音楽」というフィールドで曲を出すことがあるんですね。その一例として「MEGAREX」という音楽レーベルを紹介しようかと思います。このレーベルは主にFuture Coreを作るトラックメイカーが所属していて、主なアーティストにlapix(ラピス)さん、PSYQUI(サイキ)さん、Mameyudoufu(まめゆどうふ)さんといった人たちがいます。日本のエレクトロミュージックの中でもとりわけ強烈なサウンドが持ち味で書くアルバム非常にクオリティが高いです。さすがプロ、って感じですね。このMEGAREXが出しているアルバムの中でFUGENE(フュージェネ)っていう作品があるんですけど、今回のM3でその第4弾が発売されます。

こちらがそのクロスフェードです。みんな聴いて!ほんとにすごいから!

 さらに今回MEGAREXは3枚のアルバムをM3で販売するそうなんですけど、ここではそのうちもう1つ紹介したいと思います。FUGENEと比較するとこっちはChill outな雰囲気のアルバムなのかな?よくわかんないんですけど、こっちも強い曲のオンパレードなこと間違いなしなのでぜひXFDチェックしてみてください!

ちなみにMEGAREX、過去作は全部サブスク配信されてるので聴けます。気になった人はぜひに!

 

 

 

 

 

さて!今回の記事どうでしたか!読み応えあるものになってたでしょうか???

はっきり言っちゃえばほぼ宣伝目的でこれを書いたと言っても過言ではないですが...。要は同人音楽をアマチュアが作った音楽だからって言って侮るのは大間違いなんです。さっきも言った通りアマチュアが作った音楽に金を払おうなんて人はよほどの物好きしかいないんですけど、そんな物好きがこの記事で1人でも増えてくれたらすごく嬉しいなって思いますね。そもそもこれを読んでくれるような人は物好きだと思いますが...。

 

そしてそして!この記事に興味を持ってくれた人、M3にぜひ足を運んでください!

ここで紹介したもの以外にもたくさんのサークルがこの日のために音楽を作ってきています。試聴ブースなんかもあるので聴くだけでも楽しめるよ!そして!来てくれるよって人へ!

E-16aね!!!!!!!!

ぜひMOタク「Why don't you eat MONACA? Vol.2」をよろしくお願いします!!!

以上、宣伝でした!ではではこの辺で。次回を楽しみにしてくれる人、いたらまた読んでね!

~今、このクリエイターがアツい~ その1

えー、今回のブログの書き始めの前にひとつだけ。

前回の「え、まだ『作曲家オタク』になってないの?」という記事なんですが、おかげさまでフォロワーさん中心にたくさんの反響をいただきまして、現在までに500PVを突破、さらにはてなブログ公式Twitterにて紹介までしていただいてしまいました...。ほんとにありがとうございます。まだ見てないよって方は是非読んでください()

 

 

うーん、この間のVTuberのやつといい、マニアックな記事を書いた方が伸びるらしい...ということにやっと気づいてきました。なのでこれからも極力マニアックな記事を書いていこう!!!ということで、、、

 

個人的に今注目してほしいクリエイターさんを徹底的に掘り下げる記事を書いてみようと思います。

 

最初に言っておく、これは布教だ

 

 

 

と、いうわけでですね、このシリーズ第一弾は最近新たに3曲の楽曲がリリースされた毛蟹さんについての記事を書いていきたいと思います。

 

動く、動く

動く、動く

  • provided courtesy of iTunes

 

毛蟹さんが注目を集めるきっかけになったのは2017年に担当したアニメ「少女終末旅行」のOP「動く、動く」で、そこから一気に知名度は急上昇しました。現在ではTrySailClariS西川貴教など多くのアーティストへの楽曲提供を手掛けていますが、中でも外せないのがReoNaの存在ですね。デビュー前からほぼ全ての楽曲において作曲もしくは編曲に携わってきており、主に作詞担当のハヤシケイ(KEI)さんと共にまさに彼女の世界観の要となっています。そんな毛蟹さんが手掛けてきた代表曲をいくつかと、今週解禁された3つの新曲について、語っていっちゃいましょうか。

 

 

Independence / 神崎エルザ starring ReoNa

2018年7月4日発売ミニアルバム「ELZA」収録 作曲・編曲担当(作詞:ハヤシケイ)

 

Independence

Independence

  • 神崎エルザ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 最初に僕が毛蟹さんの名前を意識するようになったのがこの楽曲ですね。かなりアップテンポのインダストリアルロックですけど、様々な曲調が入り乱れながらも一つの楽曲を形成している、すごく絶妙なバランスで成り立ってる曲です。ギターの勢いで押し通すAメロから繊細なピアノと4つ打ちのバスドラが響くBメロへの転換でまず聴き手の意識を引き付け、2Aではシャッフルビートとウォーキングベースのジャジーな旋律の後にそれを断ち切るオーケストラヒットの音と共にロックチューンに戻す、といったたくさんの工夫が一つの楽曲の中でなされていて洗練された仕上がりになっているのがこの曲です。

これが入ったミニアルバム「ELZA」は全ての楽曲の編曲を毛蟹さんが担当してます。個人的オススメは5曲目の「レプリカ」って曲です。よかったらチェックしてみてくださいね!

 

CheerS / ClariS

2018年8月15日発売 編曲担当(作詞:ハヤシケイ 作曲:megane)

 

CheerS

CheerS

  • provided courtesy of iTunes

 「あのねあのね!」が一大ブームになったはたらく細胞のエンディングです。先ほどのIndependenceの強烈なロックチューンとは大きく変わって可愛らしいマーチになっており、毛蟹さんのオーケストレーションの技術がとても活きている曲だと思います。一番ではフルート、アコーディオンが交互に副旋律を奏で、穏やかなイメージを演出するのに対し、二番では一度ピアノオンリーの静かなメロディの後で快活なマーチングドラムを聴かせるコントラストを編曲で表現しています。この楽曲のドラムは伊藤"ショボン"太一さん。東京アクティブNEETsとしての活動の他、EGOISTなどの作品に参加している方です。ぜひ2サビ前のフィルを聴いてください() この曲は間奏がすごく好きで、最初にピアノが弾いたメロディをサビで半音上げたのを元に戻してストリングスで同じメロディをやるところが見事です。よく聴くと細かいこだわりがたくさんなされている曲だなって思いますね。

 

 

ALONE / 神崎エルザ starring ReoNa

2019年6月26日発売シングル「prologue」収録 作曲・編曲担当(作詞:ハヤシケイ)

 

ALONE

ALONE

  • 神崎エルザ starring ReoNa
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 ReoNa2曲目になっちゃうんですけど、毛蟹さんのストリングス編曲のセンスが光った曲だと思ったので紹介させてください() 神崎エルザの楽曲はクラシックの名曲を引用しているものが多いんですけどこの曲の引用元はA.ヴィヴァルディ「四季」。言わずと知れた名曲であり、これを現代のポップスにアレンジし直すというのは非常に難しい技だと思うんですけど、原曲に対するリスペクトを損なうことなく、出会いの季節であり別れの季節でもある「春」を「旅の歌」という形に解釈し直した、切なさを残しながらも力強い、素晴らしいアレンジだと思います。うん。特にCメロのモーダルインターチェンジからの同主短調アレンジから、間奏の「冬」への一連の流れは感動モノです。秋にReoNaさんのライブに行きましたが、最後にこれを生のストリングスでやってくれたのはマジで鳥肌ものでした。(本当の最後については後述)

 

 

 

 

ここまでが毛蟹さんのこれまでのお仕事の紹介でした。次から最新曲の感想をダラダラ話していきます。もうしばらくお付き合いください。

 

アリシア / ClariS

2月9日配信開始 作詞・作曲担当(編曲:湯浅篤)

 

アリシア

アリシア

  • provided courtesy of iTunes

 これに関しては編曲を担当していないのであまり多くは語れないかもしれないですが...。割とメロディをしてはありがちかな~~なんて思って最初は聴いてたんですけど、TVサイズだけで曲の良し悪しを判断しちゃいけないってことをよく教えてくれてる曲で、Cメロで思わぬスパイスを入れてきていて、それまで地面を走っていた曲が突然ここで離陸するんですよ。どういうことかというといきなりミクソリディアンスケール(普通のメジャースケールの第7音を♭にしたもの)に移行するんですよ。このスケールの転換が「浮き上がる感じ」の正体ってわけです。普通にG⇒Cへの転調なのかもしれませんが...。この浮遊感があって一見ありがちなこの曲に強力なオリジナリティが生まれてる気がします。まだフル尺聴いてない人はぜひ!たぶん人によってはめちゃくちゃ評価が変わるので...!

 

 

Good meal, Good life / AiRBLUE Wind(CUE!)

2月12日発売 作詞・作曲・編曲担当

 

 今一部の界隈で大注目されている声優コンテンツ「CUE!」に提供した曲です。この曲は「動く、動く」のような電波系チックなサウンド「ALONE」のような精巧なストリングスアレンジの融合型で、かなり完成度が高いです。楽曲のテーマとして「食べる」ということがあって、食べ物を刻むような歯切れのいいパーカッション、子供心を掻き立てるようなジングルの音、サビはALONEの大サビでも同じような使われ方をしていたハーフディミニッシュがエモーショナルを演出しています。落ちサビの木管からトレモロ、駆け上がりから大サビへの一連の展開はクラシカルの要素を持っていていいなって思うのと、アウトロはここでも少し四季「春」を彷彿とさせるようなフレーズが入っていて、穏やかさ、元気さを感じさせてくれます。これを聴いて改めて毛蟹さんの実力の高さ、引き出しの多さを感じてくださった方も多いんじゃないですかね。

 

 

Till the End / ReoNa

2月10日配信開始 作曲・編曲担当(作詞:ハヤシケイ)

 

Till the End

Till the End

  • ReoNa
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

大本命。この曲について書くためにこの記事にしたと言っても過言じゃないです。

SAO10周年テーマソングにして、毛蟹さん、チームReoNaの総力を結集して生まれた6分に及ぶ大傑作です。荘厳なストリングス、そしてクワイアが加わり、華々しさ、力強さが表現されたこの曲は、キリトをはじめキャラクターたちが抱えてきた葛藤、想いを言葉で、音で表現しています。驚くべきは二番の展開。それまでのCメジャー、4/4拍子から6/8、Aマイナーの平行短調に移行し、オルタードテンションを用いてよりダークさを強めた間奏は圧巻です。そこからCに戻った後でピアノオンリーで一旦落ち着かせ、ピチカート、トゥッティと盛り上げて次のメロディへ...というような展開が目まぐるしく現れるさまは、もはや交響曲と呼びたいレベルです。

ライブでALONEの後に本当の最後としてこれを生ストリングス+クワイアで特別披露してくれて、発売されたら絶対に今年の10曲に入れてやろうって思って4ヶ月...この時を待っていた...

 

「栄光はなくても、正常じゃなくても、

成功はなくても、正解じゃなくても、

きっと命は続いていく。」

 

 

 

 

なんかもう、こんな個人的布教にここまで付き合ってくれる人絶対優しいよね...。

はい、今回のブログを通して伝えたいことを簡潔にまとめます。

「Till the Endをポチれ」

実際Till the Endを聴いて毛蟹さんすごいってならないオタクなんていないんじゃないですかね。それくらいあの曲はすごいです。ReoNaの曲としても、SAOの曲としても、この先ずっと象徴されていくにふさわしいアンセムじゃないかと。他に紹介した曲も、できるだけたくさんの毛蟹さんの持ち味を紹介できるように選んだつもりですので、伝わってくれていたら嬉しいですね。

割と今のアニソン会の有名クリエイターの中では新しい方の存在ですが、まちがいなくこれからどんどん名前を見かけることも増えると思うので、今回こうやって紹介させていただきました。来期はおそらくReoNaが担当するSAOのOP「ANIMA」に何かしらの形で参加されると思います。アリシゼーションという大長編の最終章を飾るににふさわしい大作の登場をみんな待ちましょうね。

またこの企画は何度かやっていきたいと思うので、もし読んで気に入ってくれてもくれなくても、感想とか改善点とかTwitterで発信してくれたら嬉しいです。今回もPV伸びるといいな!ではこの辺で!読んでくれた皆さんありがとう、次回をお楽しみに!

え、まだ「作曲家オタク」になってないの?

ちょっと今回はいい曲語りじゃなくて、少し路線を変えたブログを書いてみようと思います。

 

 

この間とある音楽好きのフォロワーさんとご飯に行って色々会話を弾ませたんですけど、そこでひとつ話題として上がったのが、

 

「作曲家オタクってニッチな存在だよね」

 

って話だったんですね。それはそうといえばそれまでなんですけど。そうは言っても数年前に比べたら、オタクの作曲家に対する注目度ってものすごく高まったと思うんですよね。昔自分が違う趣味垢を持ってた頃、なかなか作曲家について話しても高まってくれるような人ってなかなか周りにいなかったような気がするんですけど、今となっては作曲家夜話だのアニソン派だの、クリエイターが主催するイベントが成立するレベルにまで注目度が上がってきたってこれ、めちゃくちゃ画期的なことじゃないかと思うんですよ。なんですけど。まだまだこの界隈って狭い世界で、すごく深掘りしてるような人ってなると結局フォロワーのフォロワーくらいに限定されっちゃってるような気がしてて、まだまだ異質な存在なことに変わりはないんだなぁなんて思ったりするわけなんですよね。

で、で、で、!! 僕はこの「作曲家オタク」っていう存在をもっとメジャーにしたいわけなんですよ。そこでね。実際作曲家オタクになって良かったと思ったこととか個人的にメリットだと思うこととかまとめてみようと思いまして。こういう記事、今までありそうでなかったんじゃない?多分僕らにとって作曲家で音楽を追うって当たり前のことすぎて今更記事にするまでもなかっただろうし。今回はまだ作曲家オタクじゃない人にその魅力を伝えたいわけです。「裏方で音楽を見る」って実はメリットしかないんですよ、、、ってことをね。

 

 

 

①単純に色々な音楽に触れられる。

ほんとに単純すぎる話ではあるんですけど。例えば好きなアーティストでとりわけ刺さる曲があった時に、その作曲者を調べて、その人が他にどんなアーティストのどんな曲を書いてるのか、って調べれば全然違うアーティストの界隈にいくつも飛べるわけです。そこでまた違う人の刺さった曲について...ってやっていれば無限に飛べる。まじめな話これをやるかやらないかで世界は全然変わります。

だったら好きなアーティストと似た人を探すのでもいいんじゃない?って思う人もいるのかもしれませんが。作曲家オタクのいいところはジャンルを超えられるってことなんですよ。普通のJ-POPだろうがアニソンだろうがアイドルだろうがボカロだろうが、作曲家を掘っていくと思わぬ場所にだって飛べます。音楽は宇宙なので。

知ってる曲を増やせるだけじゃなくて、「この曲のこのメロディがいい!」とか「このギターの音が好き!」とかそういう感想を持てるって楽しくない?こういう楽しみ方をしてたらどんどん抜け出せなくなったのが中の人です。。。

 

②シンガーのことももっと好きになれる。

え、作曲家が好きなら歌ってる人のことなんかどうでもいいんじゃないの...?なんて思われるのかもしれないんですけど。実はそんなことないんですよね。何でかっていうと作曲家中心になると音楽の聴き方って必然的にメロディやアレンジを意識するようになるんですけど、アレンジの中にはボーカルとの親和性もちゃんと意識下に入ってるので。そうしてるとちゃんとシンガーを実力で評価するっていうことができるわけです。「ミュージシャンの顔ファン」ってよく賛否両論あると思うんですけど、個人的にはミュージシャンである以上は音楽で勝負している人たちだってことだし、それを顔で評価しようだなんて言語道断だと思ってるんですね。アーティスト「だけ」をみてるとどうしてもそういう上辺だけの評価になってしまいがちだなって思うところがあるんです。作曲家やスタジオミュージシャンを見るっていうのはあるアーティストをそれを作り上げるチームとして見るっていうことでもあるわけです。実力のあるミュージシャンがいてそれを支えるクリエイターがいる。「この人はこんなレベルの高いことをやってる、すごい!」っていうのを肌で感じられればもっとアーティストを好きになると思うんですよ。というか、そういう見方にどんどんシフトしていってほしいですね。

 

 

③迷惑行為をしなくなる。

最近、家虎だのMIXだのっていう行為がライブ会場で厄介化してることが社会問題になってますが...。あれが何で叩かれるかっていえば根本的な原因は曲の雰囲気をぶち壊してるからじゃないですか。でまあなんでそんな曲の雰囲気をぶち壊すことを平気でしてくるかって言えばちゃんと音楽を聴くっていうことをしないからなんですよ。で、その「ちゃんと音楽を聴く」っていうことのひとつが裏方を知るってことじゃないかな。作曲家を気にしてると曲を聴くうえで作曲者の意図を汲もうって必然的になるので、空気に合わないコールとか減ってライブもいいことづくめじゃないかと思うのですが...。

あとあれですね。一部のライブ参加者って「自分はあくまで聴き手」っていう認識が欠けてる気がしますね。前に演奏をちゃんと聴きたいのに間奏で騒がれるっていうツイートが物議を醸してましたが、作曲家・演奏家へのリスペクトってこういうところでもすごく大事じゃないかと思うところがあります。個人が他人に迷惑をかけない範囲でライブを楽しむっていうところでも、作曲家オタクという在り方はひとつ大きいものじゃないかと。

 

 

......なんかすごい所々脱線してない???まあいっか。。。

アニソンに限らず日本の音楽ってすごく種類が豊富で個性が強いのがいっぱいあるので、それを形作ってる作曲家や演奏家のことを何も知らずに聴くのはめちゃくちゃ"人生"損してると思います。うん。作曲家オタクって「音楽を聴く」っていうことに対して逆張りを極めた集団だと思うんですけど、そもそも順張りで居続けるだけで満足できる?って思うんですね。人生は逆張り(パワーワード)

楽曲派の皆様方からしたら今更何だって内容だったと思うんですけど、純粋にこの価値観を共有できる人もっと増えてくれって常日頃思っておりますゆえ...。もし今まで作曲家とか気にしたことなくてそれでこの記事読んでくれてる方がいたら好きな曲の作曲家調べてその作曲家を推してみましょう、、、世界が変わります、、、目指せ1億総楽曲派社会()

 

 

終わり!クソつまんない文ばっかの記事を書いてすいませんでした、、、次はもっと面白い内容の記事が書けるように努力したいと思います...。