にじさんじ「SMASH the PAINT!!」感想 ~ヒットメーカーが提示する、新しいヒットの形~
あれやこれやといろいろあって2週間もブログ更新が遅れてしまいました...。これからちゃんとやっていきますのでお許しを()()()
さてさて、今週はずっと楽しみにしていたアルバムが発売になったので、その感想を書いていきましょうかね...!
にじさんじ「SMASH the PAINT!!」
の前に、これを手に入れるまでの紆余曲折を話しましょうか...
3/18だ!キタキタキタキタ!!!!!
......サブスクにない!!!???
いやいやいやいや、このご時世サブスクないとかおかしいでしょ。しょうがないからiTunesで買おうかな...
......配信もない!!!???
ちょっと待て、今の時代にCDしかないって何だ??お前らはジャニーズなのか...?
しょうがない、本当にいいアルバムだし、現物買ってもいいよな...
......TSUTAYA、取り扱ってない!!!???
しょうがない、アニメイトまで行くか...(車を飛ばす)
...ふう、やっと手に入れた......さて、早速聴きながら帰ろうかな......
......あれ、CD入れる場所どこ?ここかな......(違う場所)
.......バキッ
ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
そうして1曲目の3倍!sunshine!カーニバル!のデータがお陀仏しました......泣いた。いやサブスクやれよ......ネット音楽がネットで聴けないのおかしいだろうが...いい曲作ってるクリエイターが一番報われん......(全て八つ当たり)
そんなこんなで悲嘆に暮れながらブログを書き綴ります...。
letia-musiclover.hatenablog.com
VTuberの音楽が今アツい!という話を1月にブログで書いたんですけど、その中でもこのアルバムはVTuberファンに限らず、音楽好きな人は皆ぜひともチェックすべきアルバムだと思います。主な参加クリエイターには同人音楽を中心に活動するNorさんやYUC'eさん、ボーカロイド出身のゆよゆっぺさんやHoneyWorks、アニソンで活躍するMONACAの石濱翔さんややしきんさん、TAKU INOUEさんなどバラエティに富んだ作曲陣が新曲を書きおろしています。そしてそれらをまとめ上げる総合プロデューサーは「Tell Your World」をはじめ、ボカロ、アニソンにおいて10年以降のカルチャーの土台を作り上げたkz(livetune)氏。にじさんじのアンセムであるところの「Virtual to LIVE」の作者でもあります。ボカロ初の商業作品「Re:Package」を制作し、ClariSやTokyo 7th シスターズのプロデュースなどサブカル音楽の発展に大きく寄与してきたkzさんが、なぜ今VTuberに目を付けたのか。
僕の前の記事でも言ったのですが、ここでkzさんも言われている通り、「バーチャルだからこそ現実ではやりにくい表現ができる」というのは大きな強みだと思われますね。音楽という点で言えばそれと似たような雰囲気がボーカロイドにも存在していたと思います。自分では歌いにくいような内に秘めたものをボーカロイドという第三者に代弁してもらうような。VTuberの場合もそうで、自分で言葉にすることが難しい気持ちをアバターというクッションを通して表現することができるようになる。
またkzさんは記事内において「イメージソング」というカルチャーについても言及されています。
イメージソングは、その人たちが活動してきた中での時間の切り取りや配信で言った思想のような細かいディテールをさらに掘り下げていくもので、本来シンガーソングライターがやるようなことを、本人とは違う他者がやるという構造がすごく独特だと思います。
この点においてはkzさんのボカロ作品は自分の内なる感情ではなく「初音ミク」というキャラクターのイメージソングという文脈で制作していたという印象が強く、彼が最初にプロデュースしたボーカリストであるClariSも、最初は「正体不明の現役女子中学生」というもはや僕らからすれば設定上の存在でしかなかった。彼女達の最初のオリジナルソングである「DROP」という曲は、まさにkzさんのClariSのイメージソングでした。そういう点では「Virtual to LIVE」はkzさんがキャリアの中でずっとやってきたことの延長線であり、だからこそにじさんじは彼を必要とした、とも考えられますね。
そして何よりのVTuberの音楽の最大の強みは「ジャンルに囚われない」という点に尽きると思います。記事内では「ボーカロイドという音楽タグに似ている」と言及されている部分です。Future Bassのような曲があれば、ラウドロックもあり、HIPHOPやR&Bもあり、何でもありという点はクリエイターの活動の場としてもうってつけのフィールドでしょう。今回のアルバムもそうした音楽的な強みを最大限生かすべく、kzさんが多方面からクリエイターを集めています。1人の総合音楽プロデューサーが存在して、その世界観をもとに他のクリエイター達が曲を作っていく、というアルバムの構成はまさしく前回紹介した鹿乃「yuanfen」と非常に似ているわけです。このプロデュース形式はアルバムの世界観と楽曲のバラエティの両立という部分ですごく効果的だなって思います。
全曲レビューしようかな...と思ったんですけど、流石に12曲はちょっと多いので印象に残った何曲かを代表として紹介していこうかなと思います。
1+1でQ.E.D.!! / 御伽原江良 & 童田明治
作詞・作曲・編曲:Nor
NorさんはKizuna AIのプロデュースや前回の記事でも鹿乃さんの「光れ」の編曲者として紹介させていただきました。全体的にアニソン、特にキャラソンの文脈を踏んだカワイイ系ソングですが、ドラムンベース的なアプローチだったり、Aメロであえて生ベースの音を取り入れてみたりと色々な角度からスパイスを入れてきています。特に2Aのスラップだったり間奏でギターソロなんていうのは普通のクラブミュージックじゃまずないので、そういう面白い試みをやれるサブカルソングの強みを存分に感じられる曲なんじゃないかと思います。
サンデーサンデー・フルーツフール / える & シスター・クレア 作詞:八城雄太 作曲・編曲:石濱翔(MONACA)
アニソン界では言わずと知れた鬼才集団MONACAから石濱翔(かける)さんが参加されたのがこの曲です。石濱さんはMONACAの中ではエレクトロポップサウンドを得意としており、そこにkzさんが目を付けて参加に至ったという感じでしょう。モダンな音色と渋谷系のような落ち着いたメロディが共存しているところがこの曲の魅力でしょうか。そのお洒落さを増幅させているのが要所で挟まれるストリングスセクションとギターのバッキングですかね。こちらの楽曲もギターを演奏されているのはお馴染みの堀崎翔さん。普段と違うアプローチの堀崎さんの演奏もまた聴きどころです。
Playtime Magic / 加賀美ハヤト & 夢追翔 & 緑仙
作詞・作曲・編曲:Avec Avec
今回のアルバムの大穴。バケモンですこれ。
昔からの正統派な日本風R&Bと言われればそうかもしれないですけど、Kawaii Future Bass以降のネット音楽的なサウンドも積極的に取り入れてきてるんですよね。Avec Avec、天才か?IIm7→III7→VI△7とかいうコードイカしすぎでしょ。いろいろVTuberの曲漁ってみましたけどこの手の曲って実は今まであまりなかったんじゃないかと思うのでこれはかなり新鮮でした。あと僕は単純に緑仙さんの歌声が好きです。緑仙さんがボーカルを担当した曲で「Last Resort」という曲があるんですけど、マジで声綺麗なのでそちらもチェックしてみてください。
Aimless Story / 静凛
作詞・作曲・編曲:kz(livetune)
総合プロデューサーのkzさんが作った曲は静凛ちゃんのこの曲です。いや、最初解禁されたときの衝撃ときたら。kzさんのダウナーで奥行きを感じるようなサウンドだともしかしたらやなぎなぎ-emptyまで遡るかもしれないです。まるで大気圏を突き抜けて宇宙を彷徨うようなPADとピアノの音色から、包み込むようで力強さを併せ持つ凛ちゃんのボーカル。タイトルの「Aimless Story(あてのない物語)」というのは、これまで、そしてこれからもずっと、にじさんじがライバーとリスナーが一体となって作られるものであり続けるようにというkzさんの願いであるようにも思えます。根っからのkzオタクとしても自信をもってお勧めできる曲なのでぜひに...!
イントロで似た雰囲気を感じたこの曲、数少ない北欧系エレクトロニカなのでおすすめです...めちゃくちゃいいぞ......
アンチグラビティ・ガール / 月ノ美兎
作詞:MCTC 作曲・編曲:TAKU INOUE
満を持してアルバムの最後を飾るのは委員長こと月ノ美兎ちゃんのオリジナル曲。もうイノタクさんには頭が上がらん...何でこんなアップテンポのはっちゃけた曲で泣いてるの俺は...?この曲がアルバムの最後でほんとによかったなって思います。まず最初のヤバい点が一貫して生ドラムにこだわってるところです。クラブミュージックで生ドラム使っちゃいけないなんて誰が言ったと言わんばかりに生ドラムのフレーズをぶっこんでくるんですよね。好きすぎる。固定概念を完全に壊してくれます。歌詞の内容は「今まで辛いこともいろいろあったけどそれもこの先も笑っていこう」というVtLとはまた違う、にじさんじという存在を象徴する曲だなって感じました。
いかがでしたでしょうか?(中身のないブログあるある)
にじさんじのアルバム、まさしく「未来のJ-POP」があるべき姿のひとつなんじゃないかな、と。ボカロ、アニソンにおいて最前線で活動してきたkzさんをはじめ様々なクリエイターの皆さんだからこそ描けるものだと思います。言うなれば、そのための実験場です。そしてその実験場は、リスナーを試すものでもあります。あれだけの様々なジャンルが入り乱れるアルバムは他になかなかないでしょう。どれだけ幅広くリスナーが興味を示してくれるか。作る側の我儘に聴く側はどこまでついてきてくれるのか。そうしたこともこれからの音楽を考えていくための物差しになるでしょう。「発信者と受信者が一体となって作るコンテンツ」には、ある点では発信者本意な側面もある、と。
そういう難しい話はさておき、このアルバムが「ガチの名盤」であることはもう紛れもない事実なので。ほんまにサブスクに出してくれ(切実) 音源入手方法がCDしかないと本当に人に勧めにくいんですよねぇ...もっとたくさんの人にVの音楽の魅力を知ってほしいんだけどなぁ。。。というわけでなんかほかに書くこともなくなってきたのでここまでにしましょうか。みんなでにじさんじのアルバムをサブスクに出すよう圧をかけていきましょう() ではでは次回もよろしくお願いします♪