リーティアの隙あらば音楽語り

サブカル系音楽を中心に自分が気に入ったものを布教するだけのブログです

今だから聴きたい、ポストロック・シューゲイザー・エレクトロニカ系VOCALOID

こんにティア~~!!!

さてさて、いよいよ夏真っ盛りのクソ暑い時期になってまいりましたがいかがお過ごしでしょうか。音楽界はといえば、先週全てをひっくり返す大事件がついに起きましたね。

 

米津玄師、サブスク解禁――

 

いやー、待ってたと言えば待ってたし来ないと思ってたと言えばそれもそうなんですが。来てしまいましたよ。もちろん新作STRAY SHEEPも聴きました。新曲ことごとくキモくて良かったですよ。特に迷える羊。1曲の中でスケールの変化がヤバすぎる。全体を通しては、やっぱり坂東祐大さんと組んだのが大きくてこれまでとは音楽性の幅がもう全然広がってるなって感じでした。まだ聴いてない方はぜひ斜ぶってないで聴いてくださいね。

ただまぁ本当の事件は

ハチもサブスク解禁 って方なんじゃないかと思うんですよ。今J-POP界を席巻してるアーティストのボカロも聴き放題となれば、ますますボカロの一般化も進んでくるような気がしますね。そこでです。今回は僕が最近掘ってる主にポストロック・シューゲイザーエレクトロニカ系のボカロを有名どころからちょっとコアなところまで紹介したいなーと思いまして。ぜひお付き合い願います。。。

 

目次

 

☆ミクゲイザー、ミクトロニカについて

その名の通り初音ミクを用いたシューゲイザーエレクトロニカという意味なんですけど、実際のところ初音ミク以外のソフトを使った曲についてもこのタグが使われているみたいですね。で、この初音ミクを用いてシューゲイザーを作るムーブメントは2010年頃に出てきたもので、その頃って言えばまさに米津玄師(ハチ)やwowaka、DECO*27といった人達がニコニコで全盛だった時代ですね。そのためメインストリームに上がってくることはなかなかなかったんですが、コアなボカロ愛好家や硬派なサウンドを好む人達の間では人気を博していたようです。このミクゲイザーを作っていたボカロPの方々も、現在はメジャーのバンドをやっていたり楽曲提供を行ったり、インディーズで活動を続けていたりと様々です。

 

☆個人的オススメコンポーザー紹介

yuxuki waga / そらいろくらぶ


Light Falls(feat. 初音ミク)/yuxuki waga


【初音ミク】Contrail【オリジナル曲】


日々の波間に / yuxuki waga

yuxuki wagaという名前、聞き覚えのある方も多いと思いますが...そう、fhanaのギタリスト、yuxuki wagaその人です。以前に書いたFLEET(佐藤純一さんが以前やっていたバンド)についての記事でもちらっと触れたんですが、fhanaにシューゲイザーの文脈が存在しているのは和賀さんによるところが大きいです。この時代のミクゲイザーと自称他称される音楽の中でも最もシューゲイザーに近いとも言われています。全体的な音楽性としてはよくシューゲイザーに対する形容詞として使われる「轟音」という感じとは違うんですが、流れるようなギターのアルペジオが印象的で、ポストロックとシューゲイザーの交点、というのが近いかもしれないです。そんな中でも正真正銘の轟音シューゲイザーとして名高いのが「love is like a dance in feedback noise」という曲です。ボーカルすら掻き消してしまうような轟音のサウンドはまさにシューゲイザーの到達点である「音の洪水」と呼ぶにふさわしい1曲です。あとはボカロではないですが、fhanaデビュー前のtowanaさんをフィーチャリングした「日々の波間に」という曲。ギターの音色が陽の光のように降り注いでくるような印象、少し宇宙コンビニ/JYOCHOのサウンドとも通ずるものを感じました。曲自体はこちらが先ですが。

この他にもyuxukiさんのさらに前身であるバンド・そらいろくらぶとしての活動や、後述するwhooさん、monaca:factoryさん、ryuryuさんと結成したサークル「s10rw(ストロウ)」の楽曲も多く素晴らしいものがあり、またfhanaに通じる文脈も感じられると思います。FLEETの時も思ったのですが、曲のルーツを知って聴くのとそうでないのとでは説得力は段違いだなって思います。いい作品いっぱいあるのでぜひおすすめです。

 

whoo

先述のyuxukiさんとサークルs10rwとして活動し、現在ではシンガーソングライターとしても活躍しているボカロPのwhooさん。シューゲイザーではないのですがポストロック系のアーティストとして紹介させていただこうと思いました。彼のアイデンティティは柔らかなアコギの旋律と変則的なドラムが織りなすファンタジックなサウンドにあると思います。ポストロックというと複雑な変拍子やギターフレーズを思い浮かべがちですが、whooさんの作る音楽は非常にキャッチーでポップな印象が感じられますね。またVOCALOIDに限らず、彼が2011年にリリースしたアルバム「世界のはじまり」ではやなぎなぎさんやROUND TABLE北川勝利さんのサポートで知られるacane_madderさん、FLEET時代の佐藤純一さんなど様々なボーカリストをフィーチャリングして曲を出したりしています。2018年には自らが歌唱も手掛けた全10曲入りのアルバム「W」をリリースし、これまでのポストロックの中にフォークの要素も取り入れ、歌声まで含めてさざ波にさらわれてどこかへ連れて行ってくれるような、そんな不思議な浮遊感を感じられる作品になっています。もう活動歴は10年を数えるボカロPですが、同時にこれからもっと注目すべき気鋭のアーティストでもあるような気がしますね。

 

keeno

 

keenoさんは2010年から活動を始められて、投稿頻度はそこまで高くないですが伝説入りが3作品、うち初投稿の「glow」ではダブルミリオンを達成しています。ポストロック系のバラードがメイン...というかほぼバラードしかない。逆に言えば高速BPM、詰め込み譜割上等なボカロ界隈においてバラード一本で今の地位に至ったとんでもない人。ギターの音の粒の美しさはもちろんなんですが、keenoさんの曲を聴いていて秀逸だと思ったのがPADの入れ方ですね。水面に広がる波紋のように、空間的広がりをもって隙間を埋めていくような、何というか、奥行きを感じるんですよ。それがすごく美しいなって思いました。歌詞の内容も美しくそれでいて痛々しい。そしてそれをVOCALOIDという「無垢な存在」が歌っているのが、ある意味残酷なようにも感じます。いや、それが魅力なんですけどね。またkeenoさんはボカロ曲に限らず、アニメ「実験品家族」のEDで鹿乃さんが歌う「春に落ちて」や、「萌えタンシア、オル~!!!」のネットミームで知られるRe:ステージ!のユニット、オルタンシアの「crave」といった曲も作曲しています。2曲とも音楽性は自身のボカロ曲の延長線上にあるので、もしこの2曲を知ってるよって方はぜひともオリジナル曲を聴いてみてくださいね。


【MV】鹿乃「春に落ちて」【OFFICIAL】


Ortensia - crave※ライセンス所持表示確認済

 

Lemm


Atoropa / Miku Hatsune


Tourbillon / Miku Hatsune

 

Lemmさんはロックというよりは電子音楽系の作曲家なのですが、最初聴いた時やばいと思った。前衛的なボカロ界隈の中でも一際尖ってる。エレクトロニカをベースにジャズやクラシック、IDMなどのありとあらゆる音楽的文脈を結集させたボーダーレスな作風です。というよりもはや現代音楽に近いです。例えば「Absolunote」という曲なんですけど、可愛げなワルツが始まったと思ったら開始15秒くらいでドラムンベースに変わるんですよ。そこから目まぐるしい勢いでテンポも拍子も調も変わる。こんなとんでもない曲がニコニコに転がってるのやばすぎるでしょ。最近の作品である「Atoropa」や「Tourbillon」では本格的なオーケストレーションを導入し、なかなかボカロでは類を見ない、現代交響曲のような壮大な楽曲になっています。またこちらもボカロに限らず、昨年女性シンガーのlasahさんとコラボしたアルバム「デッドエンド・アパートメント」をリリースしています。他、VTuber事務所Re:AcTのコンピレーションアルバム「Since-Re:ly~シンシアリー~」にオリジナル曲「徒然Pieces」を提供したりしています。「徒然Pieces」はLemmさんのエレクトロニカの文脈をアイドルソングに落とし込んだ革新的な楽曲なのでこれもぜひ聴いていただけたらという感じです。いや、できれば全部聴いてほしいですね。こんな曲作ってる人、なかなかいるもんじゃないので。


【オリジナル楽曲】Re:A projecT 『徒然Pieces』【Re:AcT】

 

 

おわりに

改めてボカロ文化ってすごいなって思いました。ロックからエレクトロからクラシックから、何でも1つの界隈に混ざってるようなところ他にないでしょう。だからこそ、いろいろな人が気軽にクリエイターになれたし、その中からリスナーが自分の好きなものを見つけるのも容易になった。ただその反面、自分の好きなものを見つけて、さらにその先へ進むことは、かなりの労力と好奇心が必要な行為なのかもしれないと感じましたね。そこでやっぱり一部に再生回数が集中するっていうことになってるのかな。まぁしょうがないことなんですけどね。でも再生回数そんなに多くなくてもすごい曲はいっぱいあるし、それがボカロの魅力なのかなって思います。この記事がそんな「すごい曲」を1曲でも新たに知るきっかけになってくれたら嬉しいですね。

 

この記事作るのに4時間くらいかかってしまった...。やっぱり文章書くのはそれなりに疲れますね。今月もいい曲がどんどん出てるのでそのうちまとめて紹介していきたいと思います。ではでは、お付き合いいただきありがとうございました。。。