FLEETというバンドに、衝撃を受けたという話
今回も記事を読んでくださっている心優しい皆さん、こんにちは!元気にしてますか?
東京はだいぶコロナ減ってきたらしいですね。僕の周りは別に何もという感じで人がうろちょろしていますが...... 正直なことを言うと、今の世の中に妙な生きやすさを感じている人間です。単純にコミュニケーションが減ってるから、というか、コミュニケーションをしないといけないっていう強迫観念が無くなってるのが今なんじゃないかって気がして、昔のようなストレスがないというか。まぁ、ここはそんなことを書くためのブログではないのでこの話はこの辺にしておきますが。
さてさて、今回の内容に入っていこうかなっと。
今回書きたいのは、FLEETというバンドの話です。このバンド、アニソン界ではおなじみのfhanaのフロントマンである佐藤純一さんを中心に2006年~2011年にかけて活動していたバンドでして。何でそんなバンドの話を今するのかって?まぁ単純な話なんですけど、偶然サブスクで見つけたからです。それまでも佐藤さんが以前FLEETというバンドをやっていた、ということだけは知ってたんですけど、曲を聴いたことはなかったんです。唯一知ってたのがニコニコ動画に上がっていた初音ミクの「cipher」くらいのもので。そんな中で見つけたのが大体2ヶ月くらい前でした。それで、これがあのFLEETなんだって思ってDLして聴き出したのが始まりでした。
.......衝撃だった。
それまで僕にとっての佐藤さんのイメージってすごくキャッチーで爽やかな編曲をする人だと思っていたんですが、彼の才能はそれだけじゃない。この当時の彼、つまりFLEETの音楽ってバンドサウンドと電子音楽を絶妙なバランスで両立しているのは確かにfhanaと共通なんですけど、fhanaのようなキャッチー、という印象とはまた違うものだなって言う感じがしたんです。なかなか言葉にするのが難しいですが、音の波の中を揺蕩うような、幾何学的でありながらも自然に溶け込んでいるというか。こんなことを言ってもなんのこっちゃと思うとは思いますが、、、ただ一つ間違いなく言えることは、この佐藤純一というミュージシャンは自分が今まで知ってるより遥かにすごい才能を持った人だった、ってことです。
多分僕以外にもfhanaは好きだけどFLEETの歌は聴いたことなかったりとか、fhanaは知ってるけどFLEETのことは知らないとか、そういう人はいるんじゃないかと思うんですけど、そんな人たち向けに今回はこのFLEETというバンドの魅力、凄さを話せたらいいかな、と思ってます。何卒お付き合い願います。
・FLEETってそもそもどんなバンド?
そんなことwiki見りゃわかるだろ!って話ですが、、
佐藤さんとギタリストの池田雄一さん、電子音楽を中心に活動していた仲井朋子さんによって結成されたバンドだそうです。ただ驚いたのはゲストとしてあの今は大物プロデューサーのいしわたり淳治さんやtoeやthe HIATUSのドラマーとして活動されている柏倉隆史さんがゲストとして迎えられてるってことなんですよね。これだけの人をゲストに呼べるっていうのはやっぱり実力を業界内で認められていたってことなんだと思います。
作品として世に放たれた音源はシングル「Brand new reason」と3枚のアルバム「pre view」「review」「TRANSIT」。このうちサブスクで聴けるのは「pre view」と「review」です。「TRANSIT」収録曲の中でも「-ward」という曲はニコニコ動画で聴くことができます。
・バンドとしての魅力について
魅力、と言っても最初に書いたことですが、ロックとエレクトロニカ、両面からアプローチした多彩な音楽性、それでありながらバンドとしての世界観はとても綺麗にまとまっている、といった点にあると思うんですが、その、世界観が綺麗に1つにまとめ上げられている要因はどこにあるのか?あくまで僕自身の憶測に過ぎないですが、佐藤さんの歌声がそうなんじゃないか、という気がしました。fhanaでも1曲だけ佐藤さんがリードボーカルを務めた「Critique & Curation 」という曲 (作曲はyuxuki wagaさん) があるんですけど、彼の歌声ってバンドの中で一際映える最近のJ-ROCKに多いタイプのボーカルではなくて、あまり主張しない、周りの楽器の中に自然と溶け込むような歌声の持ち主なんですよね。最初に音の波の中を揺蕩うような、って言いましたけど、バンドの音だけでなく、ボーカルからもそういう雰囲気を感じ取れるような気がします。ボーカルまで含めてバンドの音として一体になっている。これこそがFLEETの世界観を強固なものにしている大きな要因じゃないかと思うんです。
・個人的推し曲をピックアップしてみた
文章で大雑把に魅力をどうこう言ったところで上手く伝えるのはやっぱり難しいので、サブスクで聴ける「pre view」と「review」の中から、個人的に好きだなって思った曲の感想を書いていこうかなと。
orrery
(pre view M1, review M10)
どうでもいいんですけど、ミニアルバムの最初の曲が、後のフルアルバムで最後の曲になってるやつってめちゃくちゃエモくないですか?個人的にはすごくエモみを感じてしまうのですが...
まずこの曲、基本的な構造としてはミニマルなんですよ。最初に提示したフレーズがバックで鳴り続けながら、そこに新たなフレーズを足していくことで音楽を形作っていっています。これが、世界が開けていくような印象や、これからどんな歌が始まるんだろうという高揚感を聴き手に与えている。「orrery」という単語は「太陽系儀」を意味していて、そのサウンドもまさしく目の前に宇宙が広がり始めるようなイメージが連想されると思います。そしてAメロで佐藤さんのボーカルが音を包み込むように入ってくる。これで僕は完全に心を掴まれてしまいまして...。それからサビですね。ここはまさしく佐藤純一の真骨頂とも言うべき聴かせるメロディ。この美しいロングトーンは、その9年後に生まれたfhanaの「calling」のメロディに通じるものを感じます。これが文脈か。。。fhanaの中でも最初のEPは割とFLEETの延長線上のようなポストロックサウンドが多かったんですが、メジャーデビュー後はそれとは違う独自の路線をどんどん開拓していった中で、callingは割とFLEETに回帰したようなサウンドなのかなと感じるところがありました。そしてそのリファレンスとして大きいのが、まさしくこのorreryじゃないかと思うところです。
そしてアウトロも、イントロと同じフレーズによって収束していくんですけど、つまりは軸から展開して、また軸にまとまっていく、そんなような歌なのかなと思います。だからこそ、アルバムの最初の曲としても最後の曲としても機能しているんだと思ったわけです。素晴らしい曲ですが、callingと併せて聴くとよりその魅力を大きく感じることができるんじゃないかと思います。
stella
(pre view M2, review M9)
この曲はさっきのorreryとはまた違う純粋なポストロックサウンドが特徴なんですけど、この曲の最大の特徴はその歌詞にあります。この曲は、佐藤さん自身が作詞を手掛けた唯一の楽曲なんです。FLEETはそもそも佐藤さんが作詞を手掛けているバンドではないですし、fhanaの作詞は基本的に林英樹さんという方が手掛けられていて、あとは数曲ボーカルのtowanaさんが作詞した曲があるのみで佐藤さんが歌詞を書いた曲は1曲もないです。また提供楽曲に関しても、自ら作詞した曲はありません。そんな中で唯一佐藤さんが作詞した貴重な曲がこの「stella」。他のFLEETの楽曲やfhanaの楽曲と比較してもロジカルな言葉遣いは少なく、全体として口語的表現でできているのが歌詞の大きな特徴ですね。爽やかっていうのは少し違うような気もしますが、素直な気持ちが表れた歌詞だなって感じです。サビの印象的なフレーズの「音楽はいつだって流れているから」という一節、もうそこらのJ-POPじゃ布雑巾レベルに使い古された表現だと思うんですけど、それが逆に新鮮な印象を与えてくれるんですよね。多分他の作詞家からは絶対に飛び出さない、佐藤さんだからこそ出た自然体の言葉がこれだなって思うんです。多分この先も佐藤さんが作詞する曲は出ないと思うので、本当に貴重だと思います。彼の音楽に抱く純粋な気持ちを感じ取れる1曲、ぜひおすすめさせてください。
Brand new reason
(review M1)
この曲は今から14年前に放送していた「イノセント・ヴィーナス」というアニメのエンディングテーマで今のfhanaと同じくランティスから出されたきょくだそうです。そうなんだ そういう点では今の佐藤さんのアニソン作りの源流になっている曲、と言えるかもしれませんね。1コーラス89秒が本当に1つの無駄もない構成になっていながらあまり主張の強いアニソンという印象はなく、あくまで普通のポップスとしても聴くことができる。アニソン特有の癖の強さみたいなものはなくて、Aメロとサビしかないので多くの人に親しみやすい気がします。fhanaとして手掛けた初めてのアニソンである有頂天家族ED「ケセラセラ」も同じような印象を感じます。代表的なワンダーステラや青空のラプソディは本当にアニソンらしさを全開にした曲だと思うんですけど、ケセラセラに関して言えばあくまでアニソンとポップスの共通項を探って割と親しみやすいものを作った、という印象が強くて。そうした作風になった要因の一つとして、この曲を作った経験があったからなんじゃないかという気がしました。FLEETの音楽性とアニメの音楽としての二面性を上手く両立させたこの曲には、佐藤さんが今これだけアニソン界で注目を集める存在になった要因の一端を垣間見ることができるんじゃないかと思います。
star lust
(review M3)
最初の紹介でtoeの柏倉隆史さんをゲストに迎えているという話をしましたが、それがこの曲です。落ち着きのある電子音を使いながらも、疾走感のあるポストロックに仕上がっているんですが、その上で大きな役割を果たしているものこそが柏倉さんのドラムだと思います。生ドラムが入ってくるのは2番からなので、1番と2番で全然違う表情を見せてくれるのもこの曲の大きな魅力のひとつです。1番は穏やかな夜空のような雰囲気、2番は燃えるような星の輝きをイメージさせるような、それくらいの違いがあります。ドラム1つで曲の表情がここまで変わるというのは本当にすごい。そして激しくギターをかき鳴らし、それに呼応するようにドラムが打ち鳴らされる間奏も、他のFLEETの曲にはない独創的なものです。
柏倉隆史さんはtoeとthe HIATUSのドラマーであり、ロックスターという印象が強いですが、ClariS - ナイショの話、ASCA - KOE、TK from 凛として時雨 - Fu re te Fu re ru(unravelのc/w)など意外とアニソン系の音楽にも参加していたりします。ナイショの話に至ってはJUDY AND MARYのTAKUYA氏が編曲とギターで参加したりしていて、もう完全なスカパンクですね。めちゃくちゃ脱線しましたすいません。
・おわりに
いくつか曲を紹介してみましたが、まぁ当然ですがこんなものはほんの入り口にすぎません。これを読んでもらって、このFLEETというバンドに少しでも興味を持ってくれて聴いてみようと思ってくれるきっかけにしてくれることを切に願っています。今回紹介したCDってもう2枚とも今は市場に流通してないんですけど、そういった音楽でも聴けるっていうのは本当にサブスクの大きな利点です。っていうのと、僕がついこの間FLEETと出会って、それで佐藤純一という人の能力はアニソンだけでは評価しきれない、それ以上にもっとすごい、そう感じさせられました。絶対何かしらの形で、これをたくさんの人に紹介したいと思ってたんですが、何だかんだで聴くようになってから今日まで2ヶ月も空いてしまいましたね。
ちなみにFLEETと同時にyuxuki wagaさんのインディーズ時代の音源もサブスクで見つけて、それもすごく良かったです。彼は佐藤さんとはまた違ってシューゲイザーに特化した作風を持っていて、そうして様々な音楽性が混じり合うことで新たにfhanaの音楽性を作っていることがある意味すごく勉強になったと言いますか。これもまだfhana加入前のtowanaさんをフィーチャリングした曲なんかもあったりする貴重な音源なのでぜひチェックしてもらえたらなって思います。
さて、今回も完全に自己満足な記事が出来ちゃいました。まぁ個人的には自己満足なくらいの方が親しみやすい文章になるかなって気がするのでまだしばらくこんなノリで書いていくと思います。今後とも付き合ってくれたらとっても嬉しいです。ではでは今回のところはこんなもので。最後まで読んでくれてさんきゅーです。。