リーティアの隙あらば音楽語り

サブカル系音楽を中心に自分が気に入ったものを布教するだけのブログです

電音部考察記事2 ~アザブエリアの感想、見えてきたコンテンツの狙い~

こんにティア!!!

ついにアザブエリア来ましたね!!!!!ということで、恒例の(まだ1回しかやってないだろ)電音部考察部のお時間です。

 

いやー、この間に色々なことがありましたよ。今まで未公開だった世界設定が次々明らかになったり、Hyper Bassを2回も箱で聴けたり。←これ重要 いや、Hyper Bass箱で聴いたらマジで吹っ飛びますよ。色々おかしいよあの曲。と、いうことで、今回書いていきたいことは、

 

・アザブエリアの感想・考察

・「電音部」というコンテンツが目指すものの考察

 

こんなところですね。なんか完全にバンナムの回し者みたいになってますけどけっしてそんなことはないですので。。。はい。。。今回も限界オタクの長文を錬成するのでお付き合い願います、、あ、前回の記事も置いておくのでまだ読んでない方はぜひ読んでみてくださいね。

letia-musiclover.hatenablog.com

 

 

アザブエリア

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音楽的特色について

アザブエリアの設定は、エリア全体を大企業「白金財閥」によって買収され、民間による自治の下で古くからある文化と新たな文化を融合させた街づくりを行っているエリア、というものです。というかそもそも政府自体が民間の機関である可能性が出てきたわけなんですが、その話はまた今後していきます。前回の記事ではアザブエリアはレトロフューチャー色が強い音楽スタイルで来るのではないかと書いたのですが、その予想が的中したというか、プロデューサー側からもアザブはシティポップ、80sスタイルで攻めるということが公言されました。となればコンポーザーもやはりその辺に強いアーティストになりましたね。水曜日のカンパネラでも活動しコンポーザー陣の中でも有数のキャリアを持つケンモチヒデフミ、言わずと知れた最強のアンセマーtofubeats、レトロ感と緻密なトラックで注目を集めるパソコン音楽クラブ。そしてユニット曲にはエレクトロニックなサウンドでアイドルシーンにアプローチしているShogo&早川博隆 a.k.a. SigN。解釈一致というか、残っているコンポーザー陣を見れば満場一致と言ってもいいんじゃないですかね。

あと大きな特徴として、キャラクターではっきり音楽性を分けている点があります。お嬢様キャラ2人が割とシティポップに寄せたのに対して、成り上がりのセンターキャラ・黒鉄たまの楽曲はバキバキのEDMに仕上げている他、それぞれのボーカルディレクションも非常にこだわり抜かれていると感じました。このエリアのキャストが他3エリアのように事務所の枠組みではなく、とにかく実力派を選抜しているのも、ボーカル重視の楽曲を作るうえでは重要だったんじゃないかと思います。

ちなみに、ここで言う「アザブ」は現在の六本木や高輪といったかなり広範囲を総称して呼ばれています。ちなみにキービジュアルは三田一丁目付近の桜田通りですね。

 

いただきバベル (Prod. ケンモチヒデフミ) - 黒鉄たま(CV: 秋奈)

作詞・作曲・編曲:Kenmochi Hidefumi 再生時間:3分39秒

まず最初に、黒鉄たまというキャラクターに対するこの楽曲の驚異的な解釈レベルの高さを特筆すべきでしょう。彼女は金持ちが集うアザブエリアの中において庶民の生まれで、高いDJの実力を買われて白金家にメイドとして雇われたという経緯を持つキャラクターです。そして名家の令嬢2人を抑えてただ実力一点でセンターに立っているマジでかっこいいキャラです。実力と金が全てという信念を持ってる女です。そんな既存の価値観の枠に収まらない彼女を「横一列並んでせーので共感強調マジ興味ねぇ」「同調圧力品行方正めんどくせぇ音楽と金で解決すれば?」というなかなかに直球な歌詞で表現しています。こうやって変に婉曲したりせずにド直球な言葉で畳みかけるのも彼女の性格に合っているように思いますね。解釈レベルの高さは歌詞だけでなくトラックにも表れています。この曲の持つジャンルの一つとしてJersey Clubというのがあり、BPM140前後でタン、タン、タンタンタッというビートと声のサンプリングが特徴的なサウンドなのですが、90年代を中心に流行したレトロな音楽であるという歴史的背景、さらにEDMとしてはお洒落でありながらアッパーさを併せ持つ音楽的性質はまさに裕福なエリアに成り上がりという身分で立つキャラを表現する上でこれ以上ないチョイスでしょう。またJersey ClubだけでなくTrapサウンドやラップを前面に押し出した現代のトレンドに近いものを積極的に取り入れている点も後述する2曲との大きな違いです。

あとはボーカルディレクションにも要注目です。ラップ部分で語尾を上げることによってぶりっ子なイメージを持たせていますが、重要なのが下げるポイントを用意することであまりしつこくしていない点かと思います。1番の「金稼ぐ」と2番の「成り上がる」がこれに当たりますね。ただぶりっ子かと思いきや次の「アタシ」は吐き捨てるような言い方をしていて、短いフレーズの中でギャップを見せるテクニックは必聴です。秋奈さんの持つ歌唱力・表現力の高さとケンモチヒデフミさんの的確なトラックメイキングの合わせ技、最高級の仕上がりと言って間違いないと思います。

 

MUSIC IS MAGIC - 白金煌 (CV: 小宮有紗)

作詞・作曲・編曲:tofubeats 再生時間:4分57秒

今夜は!!!!仕組まれていた!!!!!!!

tofubeats。もう今更説明することは何もないでしょう。もう10年クラブシーンからJ-POP界を牽引してきた神ですよ。そんな彼がオタクソングを書いているという事実が信じられないです。はい。

煌様は普段は上品に振舞ってるけど実は照れ屋という一面を持つキャラなんですね。そんなこともあってかかっこいいビジュアルに反して可愛らしい陽気なポップチューンが持ってこられました。まさにtofubeatsお得意のディスコファンクといった感じ、アンセム感全開です。電音部、ゴリゴリのエレクトロばっかりなのかと思ってたら意外とそうでもないんですね。アキバエリアで生楽器を使うのはイレギュラーかと思っていたんですが、この曲もすごくイカしたブラスセクションが入っていて(なお打ち込み)、別にクラブミュージックってゴリゴリの電子音楽だけじゃないよっていう方向性が見える気がします。ところで、この曲とFavorite Daysのみタイトルにコンポーザーの表記がないのですが、当初この2曲はキャラクターの歌というよりかはコンテンツ、或いはクラブカルチャーそのものを歌ったものだからかなと推測していました。しかし実際のところこの曲はキャラ自身のパーソナルな曲...でありながら、よく読むとDJを楽しむプレーヤーに普遍的に当てはめることができて、当初の予想も間違いではないのかもしれないです。Favorite Daysがプレーヤー→オーディエンスの関係性を歌ったアンセムだったのに対してこの曲はオーディエンス→プレーヤーという関係性が表現されている感じのアンセムなんじゃないですかね。

あと、この曲のこだわりが見える部分がアウトロなんですよ。この曲、アウトロだけが調性が少し崩れているというか、ここだけ別の曲みたいになってるんですけど、明らかにこれって次の曲に繋ぐためのポイントでしょう。これがあるおかげで繋ぎのバリエーションがかなり広くなってるんじゃないかと思うし、ぜひ本人によるここから自分の曲への繋ぎを見てみたいですね。この曲はさすがtofubeatsというか、圧倒的な現場経験を存分に見せつけた曲だったんじゃないかと思います。

 

Haiiro no kokoro (Prod. パソコン音楽クラブ) - 灰島銀華(CV: 澁谷梓希)

作詞・作曲・編曲:パソコン音楽クラブ 再生時間:4分19秒

このエリアの中で大衝撃だった一曲です。90年代~00年代J-POP、特に宇多田ヒカルあたりを彷彿とさせるような甘さとほろ苦さを併せ持つメロディラインと、クラブミュージックならではの優雅なグルーヴの融合。R&Bのような雰囲気を漂わせるこの曲は今までのエリアから見てもかなり異色と言っていいはずです。

まずコード進行。ほとんど普通のダイアトニックコードで出来てない。ダイアトニックコードっていうのはその音階を基礎づける和音なんですけど、ほぼ全てで何かしらの捻りがなされてます。その捻りの一つがジャズ・ブルースで用いられるテンションコードと呼ばれるものですね。例えば歌い出しの部分のコードは「G△7→F#7(♭13)→Bm7」という進行(推測)ですが、この真ん中のコードがこれに当たるやつです。元のセブンスコードに9度、11度、13度のいずれかを足すことで、よりムーディーな響きを演出する作曲技法...なんですけどまぁ、そういうお洒落な技を使ってるんだーふーんくらいに思ってもらえればいいと思います。

まぁここに関してはパ音の曲全般に言えるので良くて、すごいのはそれをそのままそっくりオタク側の世界に持ってきてしまったことなんですよ。二次元コンテンツで声優のハスキーな歌い方を引き出した楽曲ってほとんどないんじゃないんですか?それに単純にこのオーダーに合わせてくるDJずっ a.k.a. 澁谷梓希さんの表現力がすごすぎる。いや、キャラとしての「僕らに手加減はないからね」っていう第一声で既にビビり散らしていたんですが... なんて、曲とボーカルの凄さを語ってたら歌詞解釈の尺が... 銀華さんはボーイッシュで万能キャラをこなす裏で純情な乙女心を燃やすキャラで、「臆病な"僕”を認めて 本当の『わたし』いつか全て見せよう」で一人称を分けているのがそれをよく表していると思いました。それで、本当の姿を見てほしいその相手は誰?ってなったときに、多分それは煌様なんですよね。もしかしてこのエリアも百合なんですか???いや、電音部は百合コンテンツだった???ちょっと今後のストーリー展開が気になってきちゃいましたねこれ。

 

曲全体の感想 & 最後のシブヤエリアはどう来る?

かねてからシブヤエリアを「最強」と謳ってきた電音部ですが、向こうが最強ならこちらは「最上」というべきでしょう。コンポーザーを見てもやはりメインシーンでクラブミュージックをやってきたという実績があるし、「強い曲」ではなく、あくまで「高尚」という言葉が似合う、サブカルっぽさは排した音楽で、本当に各エリアごとのコンセプト分けをしっかりしているのを改めて感じました。前衛性特化みたいな曲はハラジュク・シブヤのインターネット組のフィールドってことですね。

で、先日の企画会議で明らかになった事実が、ハラジュクエリアに5曲目が存在するってことでした。となると、既に18組のコンポーザーの参加が決まっていることからおそらくシブヤも5曲あると考えられます。ここで残りのコンポーザー陣を見ると、YUC'e、Aiobahn、KOTONOHOUSE、PSYQUI、周防パトラ、ミディ&瀬戸美夜子。この中でハラジュクの5曲目を書いてもらうとしたらまぁパトラちゃん様かな~という感じがします。パトラの音楽がこの中だと一番Kawaiiの感じに近いし、いろいろあって彼女のトラックがYunomiの影響を受けているという事実もあります。あとは単純に声優の曲をVtuberが書きおろすとなれば新時代じゃん?という楽しみですね。

そしてもしこうなるとYUC'e、Aiobahn、KOTONOHOUSE、PSYQUIが1つのエリアに集結するってことになります。もはや最強は約束されたも同然では?最初のコンポーザーから強い音を作るトラックメイカーを引き抜けって言われたらほぼ間違いなくこうなるはずです。先日のSmash The Paint!!リリースパーティーで一部公開されたYUC'eの曲を見ても、ここはFuture Core、Future Houseで攻めてくるはずです。VTuberミディもGarage、DnBでかなり強い音を鳴らしてくるトラックメイカーなので期待が持てます。最強のインターネットがぶつけられて来るのを全力で待ってますので。。。

 

 

見えてきた「電音部」の真意

ここまでで5000字書いてるのにまだやる気らしい、、、何卒、、、

☆音楽そのものが「コンテンツ」である

asobimotto.bandainamcoent.co.jp

先日公開されたインタビュー記事ですね。ここから、「電音部」が何を目的にしているのか、要約しながら考えていきたいと思います。

このインタビューの中でまず明らかになったのが、ASOBINOTESというレーベルの設立の上に「電音部」の存在があるということ。つまり、

音楽のためのキャラクタープロジェクト

だということです。つまり、コンテンツそのものが目的であるそれまでのIPとは正反対であり、電音部はあくまで「手段」にすぎないということなんですね。そこが一つ、大きな特徴だと言えます。

☆音楽との遭遇体験、そのために何が必要か

そこで重要になってくるのが大元のコンセプトである「音楽と遭遇しよう」というものです。具体的にどうしていくのかというと、インタビューにもある通りアイドルオタク、アニメ・声優オタク、Vtuberオタクなど、様々な層の音楽をクラブミュージックというインターセクションを通して相互に交流させていく、ということです。先述の通り各エリアごとのコンセプト分けがしっかりなされていて、そうなるとつまり全部刺さる層もいれば、どこか1ヶ所が刺さる層もいるはずです。そうした人達に少しでも違う文化圏の音楽を身近にしてもらいたいという狙いから、IPという形で新たな音楽を発信しようというのがまさに電音部のやろうとしていることのはずです。だとしたら、そのインターセクションに立っている、元からクラブにいたオタクに何か出来ることはないか?といったところで、クラブカルチャーに明るくない層にも分かりやすくその魅力を発信していくことが、今我々に求められている気がします。具体的に?自分が良いと思ったものを内輪だけで終わらせるんじゃなくて、外に向けて共有していく、それだけのことじゃないですかね。多文化間で魅力の共有が進んでいけば自然と垣根は消えてくるんじゃないかと思います。そのための動きを、クラブカルチャーのオタクが先導してやっていくことを提案したいと思っています。

☆リモート時代に即した新たなエンタメの形


『電音部』 生放送特番 -デジタルクリエイティ部-

さらに電音部では、音楽だけではなく、テック系のカルチャーも組み合わせて展開していきたいということもインタビュー記事内で述べられています。そのために活用されるのが「BanaDIVE™AX」と呼ばれるテクノロジーです。どういうものか、簡単に言ってしまえばAIと拡張現実を活用してバーチャルパフォーマンスを行う、というものです。電音部プロジェクトの公開に先立って行われた6月の「ASOBINOTES ONLINE FES」ではGame Floorでミライ小町が早速この技術を使用したパフォーマンスを行ったことで話題になりました。まぁ僕はYUC'e、石濱&秀和と被って見てないのですが... ちなみに上の動画の26:41~ミライ小町のデモプレーを少しだけ見ることが出来るんですけど、もう既にAIのDJ技術はもう違和感なく曲を繋げるレベルにまでは至っていることが分かっていただけると思います。ゆくゆくは実際のライブでもこの技術を利用してキャラ自身がバーチャルライブを行うということを考えているでしょうし、声優がキャラの代わりにステージに立つ時代はもう過去になる日も近いのかもしれません。

さらにこの技術を活用する大きな利点が、リモートでも現地に近い体験価値を得られるということ。今年はCOVID-19の影響下にあり多くのライブが配信で行われるという事態に見舞われましたが、僕は今後もこの配信ライブという形態は残していくべきだと思っています。その理由として地方は都市部に比べて圧倒的にイベントの機会が少なく、遠征には多くの費用と労力がかかるということがあります。こうした現状に対し、配信の体験価値の向上は大きな意義を持つはずです。BanaDIVE™AXではAIが楽曲を解析しそれに即した演出を自動的に行い、さらにそれをAR技術を用いて臨場感を高めるということを行うようで、配信でも同様にARによる演出を行うことを構想しているようです。ちなみに電音部の世界には「FAIHS」と呼ばれる全自動演出システムがあり、その開発元が「ニューコム・エンターテインメント」であることから、同じくバンナムが展開する「UGSFシリーズ」との関連が示唆されることに......

このように、単に新しい音楽を提案するだけでなく、最新の技術の実験・応用を行い、新たなエンターテインメントのスタイルを模索するということも、電音部の目指しているところの一つなんじゃないかと思います。

 

 

おわりに

今回はメディア展開という視点から、電音部についての考察、ならびに少しばかりの提案をさせていただきました。とりあえず、僕が持っている希望は

もっとたくさんの人にクラブに来てもらうための導線を作りたい!

っていうことなんです。先日クラブイベントで統括プロデューサーの方にお会いして前回の記事を読んでいただいたお礼をしたんですが、やっぱり同じように本当にクラブが好きな方なんだなって感じがしました。実際僕も今のようになるまではパリピばっかの怖い場所なのかと思ってたりもしたんですけど、本当に音楽が好きなだけのオタクはちゃんといるし、1人でいたって別に何の問題もないんです。フロアで踊り続けててもバーカンで酒飲んでても、迷惑さえかけなければ何でも楽しみ方は自由な場所なんです。先日のAOFでは16000人がインターネットの向こうで音楽を聴いて盛り上がったわけですが、あれと同じ雰囲気をそのままリアルイベントに持ち込んでいってくれればいいと思うし、そのための場を作る手助けを、可能なら仲間たちと一緒にやっていければいいのかなって思ってます。

やっぱり何よりファンと公式が一体になってコンテンツを作っていけるっていうのが一番電音部の魅力であり温かいところだし、俺にもやれます!やらせてください!っていう思いが強いです。コンテンツを盛り立てていけるオタクであり続けたいですね。

 

次回!シブヤエリアの曲が出たらこれも速攻で上げます!っていうか今残っている面子的にも確実にシブヤが最推しになるんだろうなって感じがあるので。clubasiaでお馴染みの人達をちゃんとシブヤで起用してくるのもやっぱり抜かりないんですよ。。。

あと次は世界観の考察も、楽曲派なりにやっていきたいですね。シンギュラリティ後とか絡んできてかなりサイバーパンクなことになってるのと、あとさっき言ったUGSFシリーズとの関連性とかも、まだまだこのコンテンツは謎だらけなので想像が膨らみます。

 

何とか!何とか前回よりはコンパクトに収まった!1エリア分しか書いてないのに前回より長くなったらどうしようって感じですからね。。。とはいえまたまた限界オタクの怪文書ができてしまったことに変わりはないですね。読んでくださった皆さんありがとうございました、というかお疲れ様でした。。。まだあと1本あります、次回もよろしくお願いします。。。

 

あ、最後に。バンナムの回し者ではありません!!!そこだけよろしく!!!!!

9月のお気に入り曲紹介 その1

こんにティア~!

 

いやー、久しぶりに記事が伸びて嬉しくなっちゃいましたね。ブログ、伸びると自己肯定感もモチベも上がるよね... いやほんと、たくさん読んでくださってありがとうございました。あとフォロワーも増えました。ありがとうございます。

9月もどんどんいい曲が出てきているので印象的だったものを紹介していきたいと思います。またゆる~くお付き合いください。

 

 

I am who I am - 鹿乃

作詞:鹿乃 作曲・編曲:Nor 9月2日発売「なだめスかし Negotiation」c/w曲

 

7月に紹介した宇崎ちゃんアニメのOPのカップリングとして収録された曲で、プロデュースは以前にも「光れ」で編曲を担当されたNorさんです。電音部ハラジュクエリアの楽曲がリリースされたのはこの翌週なのでNorさんとしては2週連続の楽曲リリースになりますね。この曲は鹿乃さんは「今までのイメージとはガラッと変わった曲」と予告していたんですが、まさにその通りでした。Norさんのサウンドとしてもかなりこれまでのイメージとは打って変わってきたなという感じ。電音部の曲がドロップを除いて全面的にらしさを出してきてたのとは割と対照的だと思います。「私は私」という曲名が示す通り自分らしくあろうという決意が鹿乃さん自身の言葉で綴られていて、ゆるくて可愛い感じの表題曲とのコントラストが印象的です。サウンドもTrapなどの要素を組み込んだまさに先端のダンスミュージックで、Norさんの持ち味のKawaii系とはまた違ったスタイリッシュな楽曲に仕上がっていると思います。

またNorさんは月末にも三月のパンタシアへの楽曲提供も控えていて、今かなりメジャーに積極的に進出しています。他にも今期にYUC'eさん、来期にはYunomiさんが立て続けにアニメ主題歌をリリースするなど、今年に入ってこのクラブ界隈から新たなムーブメントがどんどん起きようとしていて、おそらく電音部もその一つでしょう。とても楽しみですね。

 

 

くもりぎみ - CYNHN

作詞・作曲:渡辺翔 編曲:笹川真生 9月9日発売

 

先日アニソン派!でも言及され、今アニソン楽曲派界隈から急速に注目度を上げているCYNHNの新曲です。編曲はシンガーソングライターMao Sasagawaとしても活躍する笹川真生さんで、CYNHNの楽曲への参加は「解けない界面論」に続き2作目です。この曲の特徴が8分の6拍子であることと6341のコード進行で、かなり哀愁を感じる要素になっている気がします。あと個人的に君の名は。の頃のRADWIMPSの音使いと少し似ていたっていうのも哀愁を感じるところではあります。またこの曲、すごくいいなって思った部分があって、それが1番と2番のサビの歌詞とそれに対応した歌い方をしているところなんですよ。1番が「絶えず絶えず空曇ってばっかの僕だ」で「T」「B」みたいな硬い感じの子音で、2番は「読んで読んでもっと空覆いつくして」で「Y」「O」と柔らか目の発音で、1番はかなりアクセント強めで刻むように歌うんですが2番はなだらかに歌っているんですよね。かねてから作詞家としての渡辺翔さんには一目置いていましたが、もしここまで計算のうちだったとしたら本当に恐れ入ってしまいます。

CYNHN、楽曲、歌唱のレベルの高さはもちろん、歌の内容自体も結構内向的なものも多いので、あのキラキラしたアイドルソングはちょっと、、みたいな方にも自信を持ってお勧めできるのが良い所です。ぜひに。

 

Gravity - BUMP OF CHICKEN

作詞・作曲:藤原基央 編曲:BUMP OF CHICKEN & MOR 9月10日発売


BUMP OF CHICKEN「Gravity」

藤原基央、結婚おめでとう!!!!!!!

藤原基央も結婚とかしようとしてたんだ...っていう純粋な驚きがデカいですね。チャマの不倫騒動はまぁ...チャマだしな......くらいに思ってなくもないんですが。

BUMPのすごいところってバンドの音はすごい勢いでアップデートしてるのに表現の芯そのものは20年間一度も変えてないところかなって思ってます。この曲もエレクトロニカのような具体音を入れていたり、本格的な編成のストリングスを入れていたり、バンドの音楽としてはかなり挑戦的なものだと思うんですが、それでも確かにこれはBUMPの歌だってすんなり受け取れる。当たり前のようでめちゃくちゃすごいと思うんですよこれ。ただでもこの曲は藤原基央が「結婚した」ことによってより表現に重みが増してるのかなって思うところもあります。「見つけた言葉いくつ繋げたって遠ざかる 今一番伝えたい想いが胸の中声を上げる」なんて歌詞を今まではこの人は人生何周目なんだみたいな心持ちで聴いてたと思うんですけど、結婚したって聞いた後で聴けばああ、この人も同じ人間なんだなみたいな感情になるんですよね...分かってもらえるだろうか...

思い思われふりふられ、実はまだ見てなくてですね...早く見に行かないとな...

 

作詞:橋本鍾愛、生亀貴之 作曲・編曲:Snail's House 9月18日発売


【獣神化記念!新曲公開】 Two for all「LINK」ミュージックビデオ(MV)【モンソニ!|モンスト公式】

モンスト全く分かんないんですけどSnail's Houseの楽曲ということで紹介... なんか今回Norさんの楽曲も紹介してたり聴いてる音楽全体が電音部に寄ってるのバレバレですね。

いや、Snail's House、もといUjico*さんが書いた声優ソングを聴ける時代に突入してしまったなんてこんな幸せなことがあるのか...? マジで10年に一度のサブカルソング大変革期に立ち会えてるかもしれないことへの感慨深さが止まらない... Kawaii Future Bassの雰囲気を維持しつつもさらにDrum'n'Bass、IDMの要素を取り入れたサウンド、彼が5月にリリースした楽曲「Twinklestar」と雰囲気が近いです。電音部のPrincess MemeismがかなりKawaiiに特化していたのに比べたらスタイリッシュな仕上がりで、音の振り幅かなりあるなって思います。歌っているのは本渡楓さんと石原夏織さんなんですけどお二方ともkzさんの楽曲も歌ったりしていることもあってかエレクトロサウンドとの相性抜群ですね。インターネットのクラブミュージックもさすがに5年も経つとある程度飽和というかパターン化されてきてしまう節はあるのですが、それがアニソンに持ち込んできてもらえる分には新鮮な気持ちで聴けるのと、ジャンル間の融合によって新しいサウンドが生まれてくることへの期待の意味でも、トラックメイカーにどんどんこっちの音楽作ってほしい気持ちです。

 

 

4曲とちょい少なめですがあともう1本書きたいのでとりあえず今回は終わり!w

 

ところで皆さん、「いただきバベル」はもう聴きましたか????


電音部-港白金女学院-『いただきバベル (Prod. ケンモチヒデフミ)』試聴動画

いややばない??????アザブエリアは80sコンセプトって聞いてたんですけどバチクソかっこええやんこれ... ケンモチヒデフミさん恐れ入った...

前回の記事、ほんとにたくさんの方に読んでいただきありがとうございました... アザブ、シブヤについても曲が出揃ったところで前回以上のボリュームの記事を書きたいと思います。2記事合わせたら2万字いくぞこれ... もういっそこれ卒論ってことにならん?ならん了解 とにかく自分で言うのもなんですがこの記事、読んでもらえればより電音部の楽曲を深く楽しんでもらえると思います。。。

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 もうその1ってタイトルにしちゃったので後に退けないのでもう1記事今月中に書くぞの気持ちです。しばしお待ちを...ということで今回もお付き合いくださった皆様方へ感謝でございました。。。次回もよろしくお願いします、、、

「電音部」ここまでの感想とこれからへの期待

こんにティア~~!

9月だって言うのにまだまだ暑すぎワロタ、この先どうなっちゃうんでしょうね......

 

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さてです。。もはや僕の生きる希望と化しつつある最強トラックメイカーを引っ提げたバンナムのIP「電音部」が8月末ごろからついに、ようやく、本格始動してくれまして...ありがとう世界... で、気になる出来栄えだったんですけど、

 

完全に期待の斜め上を行かれた。。。。。。

 

いやその、コンテンツ発表時点であんな界隈のビッグネームの名前ずらっと並べられたらそりゃハードル上がるじゃないですか。そのコンポーザーたちを見事に適材適所に配置してそれぞれのイメージにあったものを作りながら、音楽的にも今の最先端のクラブカルチャーの中で通用するハイセンスなものが作られていて。完全に「強いは正義!!!」って気持ちにさせられてしまった...

今回はとりあえず今公開されているアキバエリア、ハラジュクエリアについてエリアとしての所感と現在公開されている7曲についての感想を書いておこうかと思います。あと今後出る2エリアの展開予想なんかもちらっと。

 

 

アキバエリア

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アキバエリアの設定はクラブカルチャー黎明期に活躍したものの、現在では他3エリアに一歩遅れを取っていること、ライブパフォーマンスを意識したDJを行っていることというのがありますが、その設定が楽曲にもすごくよく出ていた気がしました。コンポーザーはアニソンとクラブミュージックをまたにかけて活躍するkzさん、TAKU INOUEさん、佐藤貴文さんに加えて、おしゃかわポップで今急速にネットで注目を集めるTEMPLIMEという布陣。この3人の中にTEMPLIMEが混ざる構図がかなり面白いですね。

楽曲は総合的にクラブミュージックとアイドル・アニメソング、それぞれの文脈の交点を意識した、いい意味で大衆性の残ったサウンドが特徴的で、生の楽器もふんだんに使った曲が出てくるのはおそらく4エリアの中ではここだけなんじゃないかと思います。コンテンツの顔であり、同時にイレギュラーでもあるっていう構図もこのアキバエリアの魅力の一つになりうるんじゃないかと思いますね。

 

Favorite Days - 日高零奈(CV. 蔀祐佳)

作詞・作曲・編曲:kz(livetune) 再生時間:3分36秒

Favorite Days

Favorite Days

  • 日高零奈(CV:蔀 祐佳)
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  • provided courtesy of iTunes

 最初のエリアのセンターキャラの楽曲、要するにコンテンツを象徴する一曲ですね。kzさんはこれまでも、ナナシス「Star☆Glitter」やアイナナ「MONSTER GENERATiON」などコンテンツの始まりの曲を手掛けている他、代表作であるTell Your WorldやVirtual to LIVEもそれぞれ初音ミクにじさんじを象徴する楽曲です。このFavorite Daysもクラブという場所に対する愛を歌ったまさしくビッグアンセムだと、そう思いました。この曲、とにかく歌詞が素晴らしい。「大好きなものを集めて 君に届けよう 途切れた音じゃ聴こえない この日だけの奇跡」という歌詞がまさにDJという文化を要約していると思います。mixってその人の大好きを集めて一つにするものであって、本当にそれをストレートにまとめ上げてくれたなっていう感じ。「あれもこれもと選んだパーツ ジョークも加えて」この歌詞、この楽曲が初公開されたAOFの際にギバラ(VTuberの御伽原江良さん)の奇声をサンプリングしたJungleを流していて、あれ伏線だったんですか!?になりました。DJ、音楽は自由という電音部のポリシーすらも体現していて、これ以上ないアンセムです、本当に。曲の印象は、メロディはシンコペーションによってリズミカルさを生み出していて、他kzさんの曲でそれがすごくよく出ていたのがClariSnexusですね。nexusも「繋ぐ」というのが大きなコンセプトなので、この2曲の繋ぎは文脈的にも最強かもしれないですね。編曲はこの可愛らしい曲には似つかない強いキックとGarageを意識したようなビートが印象的で、クラブミュージックとしてもしっかり通用する仕上がりです。やっぱり最近のkz曲はことごとく強いですね。本当に最高でした。

 

Mani Mani (Prod. TAKU INOUE)- 東雲和音(CV. 天音みほ)

 作詞:MCTC 作曲・編曲:TAKU INOUE 再生時間:5分5秒

Mani Mani

Mani Mani

  • 東雲和音(CV:天音みほ)
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 アキバエリアで個人的に音楽的に一番強いなって思ったのはこれですね。発売当日にFavorite Daysを抑えて一番人気になっていることからもその強さはうかがえると思います。電音部というクラブミュージック主体のコンテンツに対してここまでふんだんにジャズ・ファンクの文脈を取り入れ、なおかつクラブミュージックとしてのアイデンティティを損なわない曲を作れるのはまさしくイノタクさんしかいなかったと思います。初っ端から妖艶なサックスが鳴り響く曲構成にはAOFで初めて披露されたときから完全に虜になりました。コード進行を見てもテンションコードや田中秀和さんを中心に流行しているaugコードを多用していて、通常のクラブミュージックではなかなか見られないユニークな展開を構築しています。その中でも衝撃的なのがセカンドドロップ。怒涛のサックスソロで魅せるというのは本当に度肝を抜かれたというか、電音部でこんなことやっていいんだ。この手のジャンルの曲としては長い5分を超える曲ですが、その長さが苦にならないどころかずっと聴いていたいという感覚を与える一曲です。そしてこれだけでは収まらず、歌詞についても全くスキがない。この歌詞については大人気ブロガーであるフォロワーのめがねこさん(id:meganeko_mink)も言及していましたが韻の踏み方がとにかく秀逸で、「ダーリン ダーリン」⇔「まにまに」だったり、「もっと『歪な』『秘密が』欲しいの」だったり、シンコペーションのリズミカルなメロディと合わさって展開にテンポ感を与え、さらに魅力を引き立てる一因になっています。とにかく全編において、イノタクさんの作家性が惜しみなく発揮された傑作だと感じました。

 

アイドル狂戦士 (feat. 佐藤貴文) - 茅野ふたば(CV. 堀越せな)

作詞・作曲・編曲:佐藤貴文(BNSI) 再生時間:4分38秒

アイドル狂戦士 (feat. 佐藤貴文)

アイドル狂戦士 (feat. 佐藤貴文)

  • 茅野ふたば(CV:堀越せな)
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  • ¥255
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 こちらもまたMani Maniとは別ベクトルで電音部の中では異彩を放つ仕上がりの曲ですね。茅野ふたばちゃんは普段はシャイだけどステージに立つと活気あふれるアイドルに変貌するという二面性を持つキャラクターなんですが、この楽曲ではそんな彼女の後者の一面がボーカル・サウンド両面で強調されています。曲中シャウトを多用するような曲はトラックを聴かせるクラブ界隈ではまずないでしょうし、その大迫力のボーカルに負けないハードコアの要素を取り入れた強烈なサウンド、完全にラウドロックのそれと思しきギターソロだったり、これもやっぱり電音部でこんなことしていいんだみたいなとても普通のクラブミュージックからはかけ離れたとんでもない曲ですね。もちろん全部褒めてます。この曲、サビの巻き舌がトラックの魅力を何倍にもしていると思います。普通に「お前ら頭振れ」って歌われるより「お前ルルァ頭振ルルェ!!!」って歌われた方が絶対聴いてる側としては頭振りたくなるじゃないですか。このボーカルディレクションはマジですごいと思います。あとこれはちょっとした表記の話なんですけど、アイドルマスターの時のクレジットがBNSI(佐藤貴文)なのに対してこの曲が佐藤貴文(BNSI)なのマジで解釈の一致なんですよね。電音部のより作曲家を強くフィーチャーしていく姿勢がこういう細かい部分にも出ているなって気がします。

 

アキバエリアはあとTEMPLIMEが担当するユニット曲「Hand Over」がありますが、正式な発売がまだということで今回は割愛で。断片公開されている段階での感想を言うと、メロディはある程度アイドルソングに寄せつつも、アレンジは一切妥協のないTEMPLIME流Garageに仕上がっていて、ソロ3曲ともまた方向性の違う面白い曲になるんじゃないかと期待しています。

 

 

ハラジュクエリア

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ハラジュクエリアは最近シブヤエリアから独立した区画であり、ここに校舎を構える神宮前参道學園もシブヤの帝音国際学院の受験戦争の熾烈化への対策として創設された姉妹校ということもあり、このハラジュクのユニットは3エリアの中でもとりわけシブヤに対する対抗心を燃やしている設定がなされています。メンバー3人も和気藹々としてチームワークが取れていたアキバとは対照的に圧倒的個性で攻めるタイプのキャラクター達で、それぞれ闇の深い濃いキャラ設定があるのも魅力です。コンセプトは原宿というだけあってやっぱりKawaiiが売りで、それに対するコンポーザーもYunomi、Snail's House、Nor、Moe Shopとこれ以上ない布陣で攻めています。クラブミュージックとしての評価のみで言えばアキバ楽曲の数段上を行っていて、それはもちろん制作陣も狙ってのところだと思います。

 

Hyper Bass (feat. Yunomi) (ユニット曲)

作詞・作曲・編曲:Yunomi 再生時間:2分33秒


電音部-神宮前参道學園-『Hyper Bass (feat. Yunomi)』試聴動画

 

Kawaiiサウンドでお馴染みのYunomiさんがハラジュクエリアに提供するのは容易に予想がつきましたが、実際に作られた曲は想像していたものとは全然違いましたね... 最初聴いて腰を抜かしました。少ない音数で圧倒的低音のサブベースを利かせるサイケデリックなTrapになっています。ラップのようにまくしたてるボーカル、そしてウィスパーボイスと延々サブベースを鳴らし続けるドロップ、さらにセカンドドロップは展開を変えてゲーソンのような旋律を見せたり、わずか2分半という再生時間の中でこれでもかというレベルで多彩な展開をぶつけてきていて、あまりの先鋭性に理解が追い付かないレベルでこの曲はとんでもないです。唯一の欠点がベースが低すぎて安物のスピーカーだと出せないとかなのでほんと笑っちゃいますね。セカンドドロップ以外すべて単一のコードで構成されているのもメロディが重要な要素だったアキバの楽曲とは対照的です。そしてこの曲、トラックだけじゃなくて歌詞もとんでもない。「ほらほらまた来た傷だらけバンビ」っていうのはおそらくシブヤに落ちて入学してくる受験生を指していて、併願校という地位に甘んじる学園への自虐としても機能してますね。そもそもハラジュクのセンターキャラである桜乃美々兎ちゃんは元々シブヤを受けて落ちたコンプレックスを引きずり続けているので、より強烈な皮肉になってるんですよね。そして「よかったね手前で降りなくてあんた つまりええとこれは外回りの場合」のフレーズが決定的でして。山手線外回りで原宿の手前は渋谷。この表現の仕方のセンスがYunomiさんの真骨頂というか、流石多くアイドルソングをプロデュースしてるだけの手腕がものすごく光っている歌詞だと思いましたね。とはいえ最後のアナグラムとかまだまだ不可解な点も多いので、今後の展開でこの答えを解き明かしてみて...って感じなんですかね。まぁすごい。バンダイナムコのIPから同人音楽でも前衛的みたいな曲が出たのは本当にすごいですね。

 

Princess Memeism (Prod. Snail's House) - 桜乃美々兎(CV. 小坂井祐莉絵)

作詞:OZONE 作曲・編曲:Snail's House 再生時間:3分26秒

Princess Memeism

Princess Memeism

  • 桜乃美々兎 (CV: 小坂井祐莉絵)
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 美々兎ちゃんの曲をKawaii Future Bassの祖であるUjico*/Snail's Houseさんが手掛けるの、それなんだよな!!感が半端ないですね... むしろKawaiiをコンセプトにしているハラジュクエリアの中でも完全なKawaii Future Bassを仕込んできたのはこの1曲だけで、あとは前述のHyper Bass含めバラエティ豊富に攻めてきたの、本当に電音部の音楽コンテンツとしてのレベルの高さを実感するんですよね。まずイントロの機械的加工が施されたボーカルとジャジーなコードを鳴らすエレピとのミスマッチが絶妙にはまっていて、開始2秒で完全に世界観に引き込んでしまうだけの力があります。基本のコード進行がF/B♭→Csus4/A→Gm→Gm7/C(2回目F△7)ですかね、すごくおしゃれです。あとピチカートの音色とかを使っているのも可愛さを引き立てる一因になってるんですね。この曲もかなりセカンドドロップがキモで、調そのものはFメジャーで変わってないのにシンセのリフだけがCメジャーとか、なかなかすごいことになってます。そのフレーズ自体はあ~~Ujico*さんの音~~!ってなるんですけど笑。そして、やっぱり歌詞も素晴らしいんですよ。彼女の「自信家」と「劣等感」の両方にちゃんとフォーカスしているんですが、本当にすごいのが「"Kawaii"を奏でる 世界が私に染まる」ってところで。この一節、桜乃美々兎っていうキャラクターと作曲者であるUjico*さんの共通項なんですよ。両方に対して理解がないとこの言葉を導き出すことはできなかったんじゃないかと思います。Kawaii Future Bassというカルチャーを全身で体現しているのがこの曲なんじゃないかと、まさしくそう感じます。

 

ミルキータイムライン (Prod. Nor) - 水上雛(CV. 大森日雅)

作詞・作曲・編曲:Nor 再生時間:3分33秒

ミルキータイムライン

ミルキータイムライン

  • 水上 雛 (CV: 大森日雅)
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 実を言うとハラジュクエリアのコンポーザーの中でNorさんだけは予想できなかったんですよね。NorさんはどちらかというとKawaii系というよりかは割と鋭めなFuture Soundを作るイメージがあったので、ここで来るのは実はちょっとびっくりしました。この曲はFuture Bassとは異なってGlitch Hopと呼ばれる6連符基調のリズムと太めのベースラインが特徴的なEDMジャンルの影響が強い楽曲で、特にドロップでその傾向が顕著になります。少しの幼さを感じる可愛いボーカルといかついドロップのギャップがかなりこの曲の魅力を形作ってるんじゃないかな。特にセカンドドロップ。本当にやばいです。この曲可愛い~~のノリで聴いてたら間違いなく殺されます。てか電音部、全体的にセカンドドロップやばすぎませんか?そんな雛ちゃんを形作る2つの性格は「利己的」と「孤独」らしいです。ミルキータイムライン、まさにそんな雛ちゃんの孤高の楽園って感じがする歌詞です。てかNorさん日本語の語彙やばすぎひん?元々は韓国の方なんですよね...マジですごい。Norさんが手掛けたGlitch Hop(と言っていいのか?)では他にKizuna AIの「miracle step」やbeignet(YUC'eさんとのユニット)の「Tulala Story」も名曲なのでぜひおすすめです。というか普通に繋ぎで使える...

ハラジュクエリア、全体的に曲の長さが短めで一番長いこの曲(3:33)ですらアキバの一番短いFavorite Days(3:36)以下なんですね。こういうところに世相が反映されているというか、あくまでアニソンに源流を置いているアキバとの文化の違いを垣間見れたりして面白いですね。

 

good night baby (feat. Moe Shop) - 犬吠埼紫杏(CV. 長谷川玲奈)

作詞:SEIJ 作曲:Moe Shop/SEIJ 編曲:Moe Shop 再生時間:3分32秒

good night baby (feat. Moe Shop)

good night baby (feat. Moe Shop)

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 最強のティザーBGM、満を持して解禁――。

いやもう、この曲の解禁をプロジェクト発表初日に公式サイトで聴いてからずっと楽しみにしてました。この曲は二次元コンテンツの楽曲とは思えないほど「Moe Shopの楽曲」そのものだったので。その反面、あまりにインストの段階で完成されすぎていたのでこれに歌がついて果たしてどうなるのかっていう不安もあったんですが。で、いざボーカルがついたら、インストだった時の5000倍神曲になった。ロディアスな部分あり、ラップありで、ラップ楽曲だと過去にバーチャルデュオ・KMNZに提供した「Augmentation」っていうハチャメチャにいい曲があるんですが、下手したらそれすら上回るとんでもない仕上がりで持ってこられてもはやバグですよ。「バビロン進むdecomposition オワコンワロタこのsituation」とかいう言葉遊びも韻踏みも完璧な歌詞何食ったら思いつくんだ?この紫杏ちゃんは口には出さないけど中に物凄い嫉妬心を抱えてるっていう設定があるので、この歌詞が彼女の心の声だとしたらマジで100点満点の500億点なんですよね。これ、クラブミュージックコンテンツということで当然最重要視されるべきなのは編曲なんですが、もっとオフィシャルに作詞家をキュレーションしていくのもしっかり需要あると思うのでぜひご検討願いたいですね。

曲の方はもはや従来のキャラソンの常識をもはや1ミリも掠ってないといっても過言ではないです。キャラソンって音域を1オクターブ前後に抑えるのが鉄則らしいんですけどそんなのガン無視して2オクターブ超えちゃってますからね。それをちゃんと形にする長谷川さんのレベルが高いってことですね。いやもう、一生Moe Shopに勝てん。フランス人のトラックがここまで日本人の耳に馴染むの本当に何?本当に最強でしたありがとうございます。

 

 

全体の感想と今後の予想

感想ですか?一言で言いますか。

このコンテンツ、楽しすぎ!!!!!!!!!!

ここまでで曲発表してるトラックメイカー、みんな俺の曲を聴け!!!状態なのでマジで楽しいですよ。リアルにトラックメイカ天下一武道会だし電子音楽界のスマブラですよこれは。誰がここまでやれと言った(歓喜)

 

で、残るエリアがアザブとシブヤですね。アザブは元々古くから栄えていた土地が再開発によってさらに発展しているという舞台設定のほか、出演声優も他二次元アイドルコンテンツからの選抜ということで4エリアの中ではおそらく最もブランド力を有していることからすると、レトロフューチャー的な趣向で攻めてくる線が有力なんじゃないかと踏みました。となるとコンポーザーも電子音楽アイドルソング双方に造詣の深いSigN(早川博隆&Shogo)、tofubeats、パソコン音楽クラブ辺りが濃厚なような気がします。特にアキバエリアに対する対抗馬になり得るんじゃないかと。

それに対してシブヤはクラブ文化の熱狂と共に急速に発展していること、さらにはキャストにコンテンツとしては新興勢力であるVTuberを起用していることからも、他の3エリアとは明らかに異質な性格を有していて、楽曲もかなり未来志向なものになる気がします。さらに渋谷にはこの電音部に参加する多くのトラックメイカーの土壌であり、彼らが一堂に会するイベント「暴力的にカワイイ」の会場でもあるclubasiaがあります。となるとやはりそこに所縁を持つ先鋭的なコンポーザーを起用する線が濃厚ですかね。YUC'e、KOTONOHOUSE、PSYQUIといった面々ですね。こうなるとシブヤとハラジュクでYunomiさん、YUC'eさんが共同で主宰する未来茶レコードの代理戦争になるので俄然そっちのオタクとしては楽しみですね。ただAiobahn、周防パトラ辺りが中性的な作風を持っているので読めないところではあります。特にAiobahnさんはasiaに所縁を持ちながら熱狂的なアイカツオタクでもあるという、経歴的にもどちらにいてもおかしくはないので...

 

 

ひえ~!好きなコンテンツについて熱く語ってたら8500字になっちゃった!正直ここまであるコンテンツに肩入れしたのは本当に久しぶりだし、何なら誕生から追ってるっていうのは初めてのことかもしれないので、これ書いててめちゃくちゃ楽しかったんですよ。。。まだここからどうメディア展開していくのかは未知数とはいえ末永く続いていってほしいし、アニメ業界にインターネットの電子音楽が進出する起爆剤になってほしいし、それこそ大企業のコンテンツでオールナイトのイベントとかやれたらもう画期的だと思うんですよ。色んな意味で色んな期待をこの電音部にしているし、そのために全力で推していきたい所存ですね。そんな感じです。本当にこんな限界オタクの長文を貴重な時間を割いて読んでくれた皆さん、ありがとうございます。。。

月刊最近のよかった曲 8月号

こんにティア~~~!!!!

え?今月全然ブログ書いてない...?なんででしょうね...

梅雨が明けたと思ったら今月はクソ暑かったですね。こんなだと家から出る気すら起きません...だったら尚更書く時間あったでしょうが。

茶番は少なめにして、今月も急いで月末恒例曲紹介、やっていきますか。。。

 

 

DERO - DUSTCELL

lyrics:EMA music:EMA & Misumi 8月5日デジタルリリース


DUSTCELL - DERO

 

以前にも紹介したボカロP・Misumiさんとボーカリスト・EMAさんによるユニットDUSTCELLの新曲です。MisumiさんといえばHipHop、TRAP寄りのサウンドを得意としていてDUSTCELLでもそういう曲調が多いですが、今回の新曲はそれをさらに尖らせ、攻撃性の高いトラックに仕上がっています。ところで「DERO」という単語には「はみ出し者・負け犬」といった意味があります。この曲ではそんな「負け犬」の復讐劇が描かれています。ラップの歌詞はリズミカルでありつつも非常に強烈だったり、「イル、イー、サム...」という韓国語の数詞を取り込んだり、作詞でも色々な仕掛けが施されていて聴きごたえがあります。編曲もただ音の強さだけじゃなく、各フレーズごとに転調が組み込まれていてよりストーリー性というのか、心情の変化、狂暴化のようなものが感じられてきます。3分強という長さの中でかなり厚みのある仕上がりの曲なのでぜひおすすめです。

 

アクアステップ - 井口裕香

作詞・作曲・編曲:kz(livetune) 8月12日発売「clearly」収録


井口裕香「アクアステップ」試聴動画

 

どうもkzオタクですこんにちは。この前の週に石原夏織さんに提供した「リトルシング」に引き続き2週連続のkzさんの声優楽曲リリースとなっています。この曲はkzさん曰く「水がテーマということで清涼感を意識して制作した」ということですが、それが発揮されつつも最近のkzさんらしくクラブミュージックの文脈をふんだんに組み込んだ未来志向な楽曲に仕上がっている感じがしました。全編を通して組み込まれたコロン、コロンというシンセの音は同じく「水」が大きなテーマとなっているネオンライト - TEMPLIME feat. 星宮ととのkz remixの中でも似たようなものが使われていて、彼なりの清涼感を表す音なのかなって感じがします。というか最近のkzさん、新しいトラックメイカーの良い所をどんどん自分のサウンドに取り込んでいて、歴代ボスの技を全部使うラスボス見たくなってる感じがするんですが... 電音部の「Favorite Days」でも王道サウンドの中にもUK Garageのようなアプローチが入っていたりするので、特にYUC'eさんやTEMPLIMEのことはかなり意識の中にあるんじゃないかと思います。これからもどんどんオタクソングに新しい風を吹かせていってほしい所です。

 

CREAM SODA - AMADEUS

作詞:Lotus Juice 作曲:AMADEUS 編曲:Jack Westwood 8月12日発売


AMADEUS - CREAM SODA (Official Music Video)

 

いや、恐れながら初めて知りました... あの武内駿輔さんがラッパーのLotus Juiceさんとユニットを組んで、しかも自らトラックを制作していると来ている... 2年近く活動しているのになんで今の今まで知らなかったんだという感じです。ぶっちゃけ最初聴いた時怖くなりましたね... 武内くん、やってることのレベルが高すぎる。HipHopだけじゃなくてドロップでKawaii Future Bassの文脈を入れてきたり、彼の音楽の守備範囲の広さを編曲から感じました。そして、

Kawaii Future Bassと低音イケボ、合う!!!!!!!

最近の男性ボーカルは高音が多かった(声優ソングも割とそう)中でのこれですよ...。色んな意味で後頭部を青銅器で殴られたような感覚ですもう。。。いやすごい。AMADEUS、二次元アイドルコンテンツに楽曲提供して界隈破壊していってほしい感がありますね...。トラックメイカーをやる声優はかっこいいので。

 

last drip - 熊野ぽえみ

作詞・作曲・編曲:KABOSNIKKI(TEMPLIME) 8月29日発売


【MV】last drip / 熊野ぽえみ feat.TEMPLIME

 

このVTuber熊野ぽえみさんのことは初めて知ったんですが、TEMPLIMEの新曲と聞いて... 聴いてみたらイントロで即掴まれてしまいましたね。TEMPLIME、こんなお洒落ジャズも作れるのか...。それと、ドラムの音が良い!!!!キックの音も硬さがある感じがすごく好みだし、スネアの絶妙な抜け具合もたまらんです。カボスニッキさんは元々ドラマーらしいのでその辺の音作りはかなりこだわりを持ってやっていらっしゃるんだと思いますね... あと歌声もめちゃくちゃ好きです。可愛げのある声だけど落ち着きがある感じで、よく萌え声って言われる割とエネルギー消費する感じとは違う...あれもあれでもちろん好きなんですけどね。で、そんな歌声を最大限生かしたメロの仕上がりになってると思います。A・Bメロは高すぎない低・中音域で落ち着いた感じを出してサビで伸びやかな高音を見せていく、すごくボーカルのことを考えられてるなーという感じがしました。

TEMPLIMEも電音部に参加するクリエイターの一人ということで、どんな曲が出るか今から楽しみですね。アキバエリアに続いて先日Yunomiさんの楽曲が公開されましたがかなり尖った曲になっていたので、他のクリエイターも相当強い曲を用意しているんじゃないかと期待してます、、、、、

 

V - MY FIRST STORY

アルバム 8月12日発売

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最後に紹介するのはマイファスが先日発売したニューアルバムです。マイファス、これとは別にインストアルバムを2枚、しかも一つは睡眠用BGMとしてのアンビエントのアルバムとかいうとんでもないものを出していたんですが、今回はその話は置いておいて。このアルバム、それまで培ってきたエモコアの土台はそのままにTRAPはじめエレクトロミュージックを入れ込んでいてかなり異色というか、挑戦的なアルバムになっている気がしましたね。4曲目のplasticとか、バリバリTRAPのビートを入れてきてまともに生ドラムが入るのはラスサビだけだったり、聴いてる分には全然バンドの曲って感じじゃないです。この10年間、バンドはロックだけやるものではなくなったという印象が強いんですが、このアルバムはそんな10年の総括、いかに打ち込みを入れる中でもバンドの音のかっこよさを出すか、その1つの解答としての価値があると思います。それでも真っ直ぐなエールソングである「証」だったり、別れのバラード「あいことば」のようなストレートなバンドサウンドも入っていて、バラエティ豊富なアルバムです。個人的に面白い曲だと思ったのは10曲目の「大迷惑」。最近巷で流行の「夜行性」インターネット音楽みたいな感じの、オシャレピアノと詰め込み譜割が特徴的な曲です。(Twitterでは秒針を噛む+だから僕は音楽をやめたって言われてた) とにかくアルバムとしての完成度はかなりのものだと思うので是非聴いてみてください。。。

 

 

尺がまだあるのでHF3章の話でもするか... HF3章、何気に人生ではじめて2回映画見に行くっていう経験をしたんですよ。それくらいすごかったですね。いい映画は何回映画館で見てもいいらしいです。話の筋は知ったうえで行ったんですけどこのシーンの作画こうなるんだ!って感じで。いやまた見に行きたい... いやでも来月にはヴァイオレットもあるんですよね... 先延ばしにされてた楽しみの解放止まりませんね、、、

 

というわけで、9月はもう少し、5本くらいは書けたらいいですね... もっと頑張ってネタを作りましょう。。。それではまた次回会いましょうね~~~

今だから聴きたい、ポストロック・シューゲイザー・エレクトロニカ系VOCALOID

こんにティア~~!!!

さてさて、いよいよ夏真っ盛りのクソ暑い時期になってまいりましたがいかがお過ごしでしょうか。音楽界はといえば、先週全てをひっくり返す大事件がついに起きましたね。

 

米津玄師、サブスク解禁――

 

いやー、待ってたと言えば待ってたし来ないと思ってたと言えばそれもそうなんですが。来てしまいましたよ。もちろん新作STRAY SHEEPも聴きました。新曲ことごとくキモくて良かったですよ。特に迷える羊。1曲の中でスケールの変化がヤバすぎる。全体を通しては、やっぱり坂東祐大さんと組んだのが大きくてこれまでとは音楽性の幅がもう全然広がってるなって感じでした。まだ聴いてない方はぜひ斜ぶってないで聴いてくださいね。

ただまぁ本当の事件は

ハチもサブスク解禁 って方なんじゃないかと思うんですよ。今J-POP界を席巻してるアーティストのボカロも聴き放題となれば、ますますボカロの一般化も進んでくるような気がしますね。そこでです。今回は僕が最近掘ってる主にポストロック・シューゲイザーエレクトロニカ系のボカロを有名どころからちょっとコアなところまで紹介したいなーと思いまして。ぜひお付き合い願います。。。

 

目次

 

☆ミクゲイザー、ミクトロニカについて

その名の通り初音ミクを用いたシューゲイザーエレクトロニカという意味なんですけど、実際のところ初音ミク以外のソフトを使った曲についてもこのタグが使われているみたいですね。で、この初音ミクを用いてシューゲイザーを作るムーブメントは2010年頃に出てきたもので、その頃って言えばまさに米津玄師(ハチ)やwowaka、DECO*27といった人達がニコニコで全盛だった時代ですね。そのためメインストリームに上がってくることはなかなかなかったんですが、コアなボカロ愛好家や硬派なサウンドを好む人達の間では人気を博していたようです。このミクゲイザーを作っていたボカロPの方々も、現在はメジャーのバンドをやっていたり楽曲提供を行ったり、インディーズで活動を続けていたりと様々です。

 

☆個人的オススメコンポーザー紹介

yuxuki waga / そらいろくらぶ


Light Falls(feat. 初音ミク)/yuxuki waga


【初音ミク】Contrail【オリジナル曲】


日々の波間に / yuxuki waga

yuxuki wagaという名前、聞き覚えのある方も多いと思いますが...そう、fhanaのギタリスト、yuxuki wagaその人です。以前に書いたFLEET(佐藤純一さんが以前やっていたバンド)についての記事でもちらっと触れたんですが、fhanaにシューゲイザーの文脈が存在しているのは和賀さんによるところが大きいです。この時代のミクゲイザーと自称他称される音楽の中でも最もシューゲイザーに近いとも言われています。全体的な音楽性としてはよくシューゲイザーに対する形容詞として使われる「轟音」という感じとは違うんですが、流れるようなギターのアルペジオが印象的で、ポストロックとシューゲイザーの交点、というのが近いかもしれないです。そんな中でも正真正銘の轟音シューゲイザーとして名高いのが「love is like a dance in feedback noise」という曲です。ボーカルすら掻き消してしまうような轟音のサウンドはまさにシューゲイザーの到達点である「音の洪水」と呼ぶにふさわしい1曲です。あとはボカロではないですが、fhanaデビュー前のtowanaさんをフィーチャリングした「日々の波間に」という曲。ギターの音色が陽の光のように降り注いでくるような印象、少し宇宙コンビニ/JYOCHOのサウンドとも通ずるものを感じました。曲自体はこちらが先ですが。

この他にもyuxukiさんのさらに前身であるバンド・そらいろくらぶとしての活動や、後述するwhooさん、monaca:factoryさん、ryuryuさんと結成したサークル「s10rw(ストロウ)」の楽曲も多く素晴らしいものがあり、またfhanaに通じる文脈も感じられると思います。FLEETの時も思ったのですが、曲のルーツを知って聴くのとそうでないのとでは説得力は段違いだなって思います。いい作品いっぱいあるのでぜひおすすめです。

 

whoo

先述のyuxukiさんとサークルs10rwとして活動し、現在ではシンガーソングライターとしても活躍しているボカロPのwhooさん。シューゲイザーではないのですがポストロック系のアーティストとして紹介させていただこうと思いました。彼のアイデンティティは柔らかなアコギの旋律と変則的なドラムが織りなすファンタジックなサウンドにあると思います。ポストロックというと複雑な変拍子やギターフレーズを思い浮かべがちですが、whooさんの作る音楽は非常にキャッチーでポップな印象が感じられますね。またVOCALOIDに限らず、彼が2011年にリリースしたアルバム「世界のはじまり」ではやなぎなぎさんやROUND TABLE北川勝利さんのサポートで知られるacane_madderさん、FLEET時代の佐藤純一さんなど様々なボーカリストをフィーチャリングして曲を出したりしています。2018年には自らが歌唱も手掛けた全10曲入りのアルバム「W」をリリースし、これまでのポストロックの中にフォークの要素も取り入れ、歌声まで含めてさざ波にさらわれてどこかへ連れて行ってくれるような、そんな不思議な浮遊感を感じられる作品になっています。もう活動歴は10年を数えるボカロPですが、同時にこれからもっと注目すべき気鋭のアーティストでもあるような気がしますね。

 

keeno

 

keenoさんは2010年から活動を始められて、投稿頻度はそこまで高くないですが伝説入りが3作品、うち初投稿の「glow」ではダブルミリオンを達成しています。ポストロック系のバラードがメイン...というかほぼバラードしかない。逆に言えば高速BPM、詰め込み譜割上等なボカロ界隈においてバラード一本で今の地位に至ったとんでもない人。ギターの音の粒の美しさはもちろんなんですが、keenoさんの曲を聴いていて秀逸だと思ったのがPADの入れ方ですね。水面に広がる波紋のように、空間的広がりをもって隙間を埋めていくような、何というか、奥行きを感じるんですよ。それがすごく美しいなって思いました。歌詞の内容も美しくそれでいて痛々しい。そしてそれをVOCALOIDという「無垢な存在」が歌っているのが、ある意味残酷なようにも感じます。いや、それが魅力なんですけどね。またkeenoさんはボカロ曲に限らず、アニメ「実験品家族」のEDで鹿乃さんが歌う「春に落ちて」や、「萌えタンシア、オル~!!!」のネットミームで知られるRe:ステージ!のユニット、オルタンシアの「crave」といった曲も作曲しています。2曲とも音楽性は自身のボカロ曲の延長線上にあるので、もしこの2曲を知ってるよって方はぜひともオリジナル曲を聴いてみてくださいね。


【MV】鹿乃「春に落ちて」【OFFICIAL】


Ortensia - crave※ライセンス所持表示確認済

 

Lemm


Atoropa / Miku Hatsune


Tourbillon / Miku Hatsune

 

Lemmさんはロックというよりは電子音楽系の作曲家なのですが、最初聴いた時やばいと思った。前衛的なボカロ界隈の中でも一際尖ってる。エレクトロニカをベースにジャズやクラシック、IDMなどのありとあらゆる音楽的文脈を結集させたボーダーレスな作風です。というよりもはや現代音楽に近いです。例えば「Absolunote」という曲なんですけど、可愛げなワルツが始まったと思ったら開始15秒くらいでドラムンベースに変わるんですよ。そこから目まぐるしい勢いでテンポも拍子も調も変わる。こんなとんでもない曲がニコニコに転がってるのやばすぎるでしょ。最近の作品である「Atoropa」や「Tourbillon」では本格的なオーケストレーションを導入し、なかなかボカロでは類を見ない、現代交響曲のような壮大な楽曲になっています。またこちらもボカロに限らず、昨年女性シンガーのlasahさんとコラボしたアルバム「デッドエンド・アパートメント」をリリースしています。他、VTuber事務所Re:AcTのコンピレーションアルバム「Since-Re:ly~シンシアリー~」にオリジナル曲「徒然Pieces」を提供したりしています。「徒然Pieces」はLemmさんのエレクトロニカの文脈をアイドルソングに落とし込んだ革新的な楽曲なのでこれもぜひ聴いていただけたらという感じです。いや、できれば全部聴いてほしいですね。こんな曲作ってる人、なかなかいるもんじゃないので。


【オリジナル楽曲】Re:A projecT 『徒然Pieces』【Re:AcT】

 

 

おわりに

改めてボカロ文化ってすごいなって思いました。ロックからエレクトロからクラシックから、何でも1つの界隈に混ざってるようなところ他にないでしょう。だからこそ、いろいろな人が気軽にクリエイターになれたし、その中からリスナーが自分の好きなものを見つけるのも容易になった。ただその反面、自分の好きなものを見つけて、さらにその先へ進むことは、かなりの労力と好奇心が必要な行為なのかもしれないと感じましたね。そこでやっぱり一部に再生回数が集中するっていうことになってるのかな。まぁしょうがないことなんですけどね。でも再生回数そんなに多くなくてもすごい曲はいっぱいあるし、それがボカロの魅力なのかなって思います。この記事がそんな「すごい曲」を1曲でも新たに知るきっかけになってくれたら嬉しいですね。

 

この記事作るのに4時間くらいかかってしまった...。やっぱり文章書くのはそれなりに疲れますね。今月もいい曲がどんどん出てるのでそのうちまとめて紹介していきたいと思います。ではでは、お付き合いいただきありがとうございました。。。

2020年7月 お気に入り新譜まとめ

梅雨が!!!!!明けない!!!!!

7月、もう終わるらしいし大学の前期ももう終わるらしい...... まじで「2020年2(ツー)」やらん?笑

下半期、最初の1ヶ月からいい曲出過ぎ!!ということで、今月もなかなかブログ更新できませんでしたが滑り込みで紹介、やっていきますよ。レア音源からも何曲か紹介していきますね...

 

 

音がする - yuigot+長谷川白紙

作詞・作曲・編曲:yuigot / 長谷川白紙 7月3日 bandcamp限定リリース「sound leakage 2020」収録

上半期10選でも紹介した長谷川白紙さんと同じく同世代の注目のトラックメイカー・yuigotさんがタッグを組んで作られた曲です。渋谷clubasiaの支援のためにbandcampでリリースされたアルバムの中の1曲です。

......ガチで大天才。メロディとしてはソウルないしネオ渋谷系のような印象で、それに現代のクラブサウンドを当てはめて再解釈したような仕上がりになっています。10選の時にも白紙さんのコードワークが本当にすごいという話をしたんですけど、それがこの曲にも健在のままyuigotさんの電子音と融合しているのが本当に気持ち良すぎるんですよ。でもって間奏には白紙さんのジャズ由来の高速ピアノソロがあったり、ここまで分かりやすくコライトの魅力を感じられる曲は今までなかったくらいです。もう言うならポピュラーソングのいいとこ全部詰めましたみたいなとんでもない曲が生まれてしまったと言っても言い過ぎではないですね。楽曲はさることながら歌詞も素晴らしいです。

「僕とこの世の間に! 全てを巻き込んで音がする!」

世界は音にあふれてるし、その全ては音楽になる。こんなにすごい表現をされたらもう勝てん...

他の収録曲もいい曲ばかりなので、もし気になったら応援の意味も込めて買っていただけたら...なんて思います。bandcampで3kなので。

 

ANIMA - ReoNa

作詞・作曲・編曲:毛蟹(LIVE LAB.) ストリングス編曲:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.) 7月22日発売


【SAO】ReoNa - ANIMA (Music Video YouTube EDIT ver.)

 

「魂の色は 何色ですか」

...ずっと待った。この曲もアニメもめっちゃ待ちましたよほんと。

今回この曲に関しては毛蟹さんが作編曲だけじゃなく作詞までやってるんですが、本当にこの人は何なんだ... 1曲の中でロック、クラシカル、エレクトロニカ多彩な編曲要素をこれでもかというほどに詰めていて、それが邪魔し合わず1曲として溶け込んでるのと、ReoNaの歌声が歌詞の一言一言に魂を乗せていて、今まで以上に歌に重みを感じるというか。もちろんいい意味で。Dメロ前の間奏で平行転調するところは主旋律をストリングスが持つ裏で堀崎翔さんのギターソロがいつもとなくうねっていてプログレッシブ的な雰囲気で覚醒を予感させている点とか、本当に見事だなって感じです。

精神年齢が中学生で止まってるからマジでSAO今が一番面白い。あと曲とは関係ないですけどOPムービーの最後にナーヴギアが映ったところで昇天した... いろんな意味で集大成を感じましたね。

 

時間だよ - RYUTist

作詞・作曲・編曲:Kan Sano 7月14日発売「ファルセット」収録

 新潟発のアイドルグループ・RYUTistの最新アルバムから、Kan Sanoさんがプロデュースを手掛けた曲を紹介しようかな... このアルバム、僕のフォロワーの間でヤバいと話題になっていて、特にリード曲の「ALIVE(蓮沼執太フィルプロデュース)」が何人も上半期10選に入れるほど注目されていました。そんな中で個人的にこのアルバムで一番印象的だったのがこの曲でした。いきなりドラムフィルから始まってどんな曲が始まるんだと思ったら、現代アイドルらしい先端のダンスチューンを取り入れたネオソウルだったっていう衝撃。Kan Sanoさんの名前はUruの「space in the space」の編曲が素晴らしくてそこで初めて認識したくらいに遅かったんですが、実はMrs. GREEN APPLEと坂口有望のコラボ曲「Log」の編曲にも参加していたという...とんでもなく好きな音なコンポーザーっぽいです。にしても最近のアイドルの音楽レベル高すぎな。。レベルが高いと言ってもMaison book girlsora tob sakanaみたいにとにかく尖った音楽をやるのとは違って、流行音楽にある程度寄りつつ純度の高いポップスで世界観をまとめてるところがこのグループの持ち味のような気がします。あとコーラスワークのレベルの高さも一際あると思いましたね。

他に個人的にお勧めしたいのはパソコン音楽クラブプロデュースの「春にゆびきり」という曲です。一度聴いたら完全に心を掴まれるテクノポップサウンドです、ぜひに...!

 

なだめスかし Negotiation - 鹿乃

 作詞・作曲:田代智一 編曲:伊藤翼 7月31日先行配信 9月2日フィジカルリリース予定


鹿乃「なだめスかし Negotiation」【OFFICIAL】

 

アニメ「宇崎ちゃんは遊びたい!」のオープニングテーマッス。以前紹介した田中秀和氏全曲プロデュースのアルバムに引き続き、今回もハレ晴レユカイなどの作曲者・田代智一氏とRe:ステージ!の楽曲制作などで知られる伊藤翼さんのタッグという錚々たる布陣で期待値爆上がりでしたが...今回もヤバいのが来た。曲のコンセプトが「うざカワイイ」なんスけどそれを完璧に表現しながら韻踏みまくりで歯切れ抜群の歌詞。もはや畑亜貴じゃないのが不思議なレベルでは?ぶっちゃけQ-MHzとして畑亜貴氏と一緒に活動する機会があることは影響としてあるとは思いまスが... アレンジに関してはもう全くスキがないッスね。伊藤翼さんは大学時代チューバを専攻していたということもあってファンキーなブラスセクションが曲の雰囲気を引き立ててるッスね。あとはリズム隊の動きがやばい。二家本亮介さんと山本真央樹さんでもう技術がすごいのは知っての通りッスが、めちゃくちゃゴーストノート盛りすぎでは?これだけ変態的な動きやりながらよくこんなキャッチーな曲できたなって思うッス。すごいでスよね。

ちなみにこのカップリングは今大注目のトラックメイカーNorさんがプロデュースすることが発表されたッス。それとこのアニメのEDはVTuberのYuNiちゃんと同じくトラックメイカーYUC'eさんのタッグであったり、アニソン新時代の到来に期待でスね。

「えっ私の文体気になるんスか? うざカワイイですよね!」

 

VirtuaREAL.02 - Various Artists

アルバム 7月31日発売


【クロスフェード】 VTuberオリジナル楽曲アルバム第3弾「VirtuaREAL.02」

 

VTuberのコンピレーションアルバムの第3弾です(第1弾は00だった)。個人的な感想としては今回がこれまでの3作の中では1番好きだったかなーという感じです。発売前はこの中だとKMNZ×Batsuの楽曲に注目してたんですが、その曲も当然よかったんですけど後半5曲が想像以上に完成度が高かったです。The Herb Shopさんがプロデュースを手掛けた「「ふたりなら」」はゆっくりとしたEDMに絶妙にオートチューンのかかったボーカルの相乗効果による浮遊感がたまらない曲だったり、「To your star」はバンナムの電音部にも参加が決定しているミディ&瀬戸美夜子の曲ということで期待してはいましたが、こちらも正統派Future Bassで、その中でアコギのアルペジオを散りばめてみたりきらびやかなアレンジがとても良かったなって思いました。その中でも衝撃だったのが最後の「Mirage」でした。最小限のトラックでボーカルを引き立てていて、海外のヒットチャートに通じるような曲で、エレクトロ要素が強いVTuberオリジナル曲の中でもここまで洋楽的アプローチに振り切った曲というのはあまりなかったような気がするので新鮮でした。アルバム全体としてはこれまでのVirtuaREALシリーズと比較してもFuture Bass色が強かったのですがその中でもバリエーションが豊富で決して単調ではないのでぜひ聴いてみてください。オススメはビバ!バ美肉ビートライフです。おじさんでシ○れ!

 

 

月が明けたら8月ですね。8月曲といえば結構思いつくだけでもいろいろありますが、あなたの好きな8月曲はなんですか?僕?そうですね、八月、某、月明かりとかかな(順張りマン)

ヨルシカ「盗作(アルバム)」名盤!!!!となっていますが、それについては前回のブログで色々書いたので今回は触れませんでした。まだ読んでない方是非読んでみてくださいね、割と頑張ったので......

筆者、レポートまだあと2つ残ってるらしいね...早く片付けて夏休み迎えたいですね。それにしてもレポート2000字>>>>>>>>>ブログ5000字なの、何とかならないんですかね(n回目) そろそろ切り上げないと月が変わりそうなのでこの辺にしておきます。来月も良曲をどんどんレコメンドして行きましょうね~~~~~

ヨルシカが「盗作」を通して表現しようとしているものは何か

こんにティア~~~ (定型挨拶文を考えてみた)(盛大なスベり)

7月、なかなか更新できなくてすいませんでした。主にレポートとかレポートとかレポートとかレポートとかレポートとかレポートとかのせいです。許さn

とあとつい先日熱が37.8℃出てしまいまして...。

これは"貰って"しまったのか!?なんて思ったりもしたんですけど、それからまた落ち着いたりしてよくわからんという感じです。皆さんも気を付けてくださいね。

 

今回は来週発売のとあるアルバムの曲の話がしたくて、ですね...

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7月29日に発売されるヨルシカのニューアルバム「盗作」。二部からなる前作「だから僕は音楽をやめた」「エルマ」に続いて今回もコンセプトアルバムというスタイルを取っています。そのコンセプトは「”音楽の盗作をする男”の”破壊衝動”」。そして先日、リードトラックとなる、アルバムのタイトルをそのまま冠した曲「盗作」が先行配信、MV公開されました。


ヨルシカ - 盗作(OFFICIAL VIDEO)

 

この曲を聴いて、いろいろ思うことがあったのですが、それがあまりに多すぎたので、今回ここにまとめようと思いました。

そもそも、「盗作」とは世間一般に言うような単純なものなのか?

ここで歌われる「破壊衝動」は本当に単なる負の感情なのか?

この曲を聴いたときに、このアルバムのコンセプトすらも、言葉通りの単純なものではないのかもしれない。そう思わざるを得ませんでした。それどころか、日常的に音楽を消費している大衆に対する皮肉がこの曲、あるいはアルバム全体に込められているんじゃないか。そんなことすらも感じたわけです。それらを考察という形で、この曲の歌詞から感じたことを書いておこうと思います。

 

※ここに書くことはあくまで自分が感じたことであって、これが正解だと押し付けたり、特定の考えを否定するようなものではありません。ご承知おきを...

 

まず、最初に引っかかったフレーズがこれ。

音を聞くことは気持ちが良い。

聞くだけなら努力もいらない。 

 この「聞く」という部分。「聴く」ではないんですね。

これは先日謎の伸びを見せてしまったネタツイですが... 僕、というか音楽マニアは大体そうな気がするんですけど、単に聞こえる、聞き流すという意味での「聞く」と、意識的、能動的に考えての「聴く」をやたら使い分けたがるんですよね。歌詞の中の「聞くだけなら努力もいらない」という一文が示すように、本当にただ「聞く」だけであれば何も考える必要もないわけで、逆に「聞く」という行為を「聴く」に昇華させるためには努力が必要なんじゃないかと僕は思ってます。「音を聞くことは気持ちがいい」というのも、これが「聴く」であれば気持ちよくなるだけでは不十分で、気持ち悪さもまた感じる必要が出てくる。こんな感じで、「聞く」と「聴く」は同じ「音を受け取る」という行為でありながら、その本質は全く違うんです。これをあえて「聞く」としたことはやっぱり意図があって、最初、この彼にとっての「音楽」は、何となく聞こえてくるものでしかなかった、と取れると思うんです。次に行きます。

この歌が僕の物になれば、この穴は埋まるんだろうか。

だから、僕は盗んだ

彼が音楽を盗んだ動機がここで語られるんですが、それがやたらと共感性のあるもので、彼は本当に悪者なのか?という疑問が、そもそもここで言ってる「盗む」とは?というところまで行きました。

僕が音楽を始めたのはヴァイオリンを習い始めた小学生時代でしたが、思い返してみればやっぱり、心の空白を満たすため、傷を癒すためみたいな、ここで歌われていることと同じでした。いや、むしろ、音楽を始めた人のほとんどのきっかけがこれで、それと同じ理由で音楽に縋っているんじゃないかって気がします。ここでもう一度最初のコンセプトを見てみると、「音楽の盗作をする男」という風にしか書かれていない。必ずしも、特定の誰かの音楽の盗作であるとは限らない。とすればこの男は、

”音楽”という概念そのものを盗んだ

という意味なんじゃないかと。そしてそれを裏付ける言葉が、動画の概要欄に書かれていました。

俺は、音を盗む泥棒である。 それはメロディかもしれない。装飾音かもしれない。詩かもしれない。コード、リズムトラック、楽器の編成や音の嗜好なのかもしれない。また、何も盗んでいないのかもしれない。この音楽達からそれを見つけるのもいい。糾弾することも許される。 客観的な事実だけなら、現代の音楽作品は一つ残らず全てが盗作だ。意図的か非意図的かなど心持ちでしかない。メロディのパターンもコード進行も、とうの昔に出尽くしている。

音楽をやるということは、演奏にしたって作曲にしたって、まず最初は先生や過去の音楽家たちに学んでそれを真似ていくという過程から始まるものだし、その影響はその先どうしてもついてくるものだと思うんです。つまり、音楽をやるということは、言うなればそれまで積み上がってきた文化や歴史に乗っかるということ。要するに、

音楽をやる=その文化を盗む

ことなんじゃないか。少なくとも、この歌を聴いた時、僕はそう感じました。

「真にオリジナルな音楽は存在しえないのではないか」という議論は度々湧き起ってきましたが、このアルバムはそれに対して一つの見解を示すものかもしれません。

 

サビは最後に回して先に2番の歌詞を考察しますね。

「ある時に、街を流れる歌が僕の曲だってことに気が付いた。 売れたなんて当たり前さ。 名作を盗んだものだからさぁ! 彼奴も馬鹿だ。こいつも馬鹿だ。 褒めちぎる奴等は皆馬鹿だ。 群がる烏合の衆、本当の価値なんてわからずに。 まぁ、それは僕も同じか」

 このフレーズを見た瞬間に、この「音楽の盗作をする男」が強いて誰を指しているかと言えばn-bunaさん自身だろうと思いました。というのも、彼は今では個人のTwitterアカウントを削除してしまいましたが、かつて「音楽は一過性のものなので特定の物を好きになりすぎるのは危険」という趣旨の発言をしていたことがありました。それは言い換えれば、自分の曲ばっかり聴いて他の曲に目を向けない一部のリスナーに対して違和感を抱いていたんじゃないかとも思えます。男の言葉に「この音楽たちからそれを見つけるのもいい。糾弾することも許される。」とありましたが、むしろそれをしてほしいのでしょう。それは要はルーツミュジック、音楽的土台を辿るということです。それもせずにただそこにある音楽だけで全てを理解されたような口を叩かれることは、音楽に対するリスペクトが決定的に欠けている、そうn-bunaさんには感じられていたのかもしれません。あるいは世間で売れている音楽が必ずしもすごい音楽であるとは限らないということを伝えようとしたのかもしれません。ここに関してはいろいろ解釈の余地があると思いますが、とにかく現状の音楽リスナーの在り方に対して思うところがあって、それを作品という形で発信してることは間違いないでしょう。言ってしまえば音楽を「聞く」人から「聴く」人が増えてほしい、そんなことだと思います。

 

最後に、彼の持つ「破壊衝動」とは一体どんなものだったのか?

肝心の男の気持ちが歌われているサビは、「まだ足りない」「愛を知りたい」「美しいものを知りたい」というおおよそ破壊衝動という感情とは真逆なんですよね。じゃあその破壊衝動はどこに向けられたのか?と言えば、まぁ自分の内面、閉塞感や空虚に対して向けられたもので、そしてそれらを壊すために、愛を知ること、綺麗なものを知ることが必要だった。いや、本当はそれこそが目的であって、音楽を盗む行為は単なる手段に過ぎなかったのかもしれません。実際の音楽家にしても、本当に音楽を作ること、音楽で成功することを至上の喜びにする音楽家もいれば、自分の感情を表現する、もしくは人の感情を動かすためのツールとして音楽をやっているというパターンもあると思います。そしてこの男の場合は後者だったのでしょう。破壊衝動と言ってしまえば少々物騒かもしれないですが、その実はある意味では悲しく、人間らしい感情だったのかなと思います。

 

 

まぁいろいろ書きましたが、あくまで全部憶測なので。実際のところはアルバムが発売されたときに全貌が見えてくるんじゃないかと思います。これまでに解禁されている収録曲どれも力作揃いでもう期待値は上がりきってるんですけど、やっぱり多くのファンが注目しているのは再録される爆弾魔じゃないかと思います。一度アルバムに収録された曲がまさかこんな形でまた入ってくるとは思いませんでしたが、おそらく「破壊衝動」という点で大きな意味を持ってくるんでしょう。あと個人的に気になるのが、「花に亡霊」の真の存在意義です。あのいかにもアルバムのコンセプトとはかけ離れて見える不気味なほど綺麗な曲が最後に入っているっていうのが、意味のないことだとは到底思えなくて、これもアルバム全曲通して聴いたら何かわかることがあるんじゃないかという期待がありますね。

 

あんまりダラダラ書いてもあれなのでそろそろ締めようかな。。。レポートもこれくらい簡単に字数稼げればいいのに... 7月全然書けてなかったからもう1個くらい何か書きたいですね。レポートに余裕があればですが......